イカロス生活開始

ということで、帰国後あれやこれや。

時差ボケがなかなか治らず。

時差ぼけって、変な時間に眠くなるとか、逆に眠れなくなるとか、変な時間に目が覚めたり・・・とか思われるけど、というか、そう思っていたけど、それにプラスして、変な時間にお腹が減ったり、お腹が減らなきゃいけない時間に食欲がない・・・というのもあったりする。昔はあまり感じなかったのは、若かったからかもしれない。これも三十路の呪いか?

とはいえ、「時差ぼけ」っていろんなことの免罪符になるから、それを逆手にとって、ものすごい自堕落な生活に突入。もともと夜型人間が、時差ぼけ免罪符を手に入れたらもう大変。「寝れない寝れない」の自己暗示で、まだまだ逆転できるかも・・・とDSの「逆転裁判」にはまる。クリアーすると同時に拓也が「面白いよ」と貸してくれた、マリオ&ルイージ RPG3も始める。しっかりはまる。

ゲームだけじゃいかん!と映画をみることに。前向きに生きるすべを身につけようと、前から少し見たかった「ハンサムスーツ」を借りてきて見る。想像してた通りのストーリで十分励まされた気もしたが、冷静に考えてみたら、「やっぱ人間顔じゃん!」という結末だったことが判明。ブサイクとブスがくっついてハッピーエンドじゃないと駄目やん。もういろいろどうでもよくなる。

たまたまいったTSUTAYAレッドクリフが半額になっていたので、期待する気持ちはまったくないが試しに借りてみたのだが、つまらないだけならまだしも、怒りまでこみあげてきて、映画序盤からすでに見る気なくなる。三國志好きには確実に反感を買うと思われる映画。特に、曹操好きには。内容以外でも、カメラワークも最悪。ものすごく見づらいし、無駄なシーンが多すぎる。「アジアってこんな感じだよ〜」って、欧米に見せたかったのか?あのラブシーンとかいるの?無駄にエロいし。侘びも寂びもあったもんじゃない。2部完結というから、2ももちろんみるが、見る前から怒髪で天を衝く自信がある。もうどうでもいい。

どうでもよくなっている最中、マイレージカードを作ったばかりのJALANAから誕生日メールが届く。それをみて自分の誕生日に気づく。さらにいろいろどうでもよくなる。

そうこうしているうちにも、最後の審判は着実に近づいていった。そろそろ準備しないと・・・とスーツをとぼとぼ買いに行く。ちなみに、ドラクエよろしく、旅の最中、立ち寄った街で他のアイテムは購入してきた。しあわせの靴をスペインで二足購入し、はがねのネクタイは、ネクタイ発祥の地と言われるクロアチアで購入してきた。おいらの物価指数からするとむちゃくちゃ高いのだが、旅にはありがちな「若気の至り」の勢いを利用してどうにか購入した感じ。その勢いでイタリアに行ったときにスーツも買ってしまおうかと思ったが、なんとなくやり過ぎなような気がしてやめた。代わりに、ボスニア・ヘルツェゴビナでスーツ屋にいってみたが、イタリア製だったのでここでもやめた。

とぼとぼ買ったスーツで面接。出来レースのはずだったが、ちゃんとした面接で少々面喰らう。「仕事をするにあたって何が重要」とか「何を大事にするとか」とか「長所をあげて」とか・・・・もう見事なほど何にも考えずにいったもんだから、ものすごくちぐはぐなことをいってしまった気がする。あまりにちぐはぐだったのか、爆笑され、普段は絶対聞かないという注釈付きで、ゼネラルマネージャーから血液型まで聞かれた。なんだったんだ、あれ。

そうだ、新しく名前を決めておこう。

石積み場のある地域を・・・う〜ん、何にしよう・・・イカロスだから・・・「オリュンポス」にしよう。で、石積み場は・・・「アクロポリス」に決定。

アクロポリスは、前に石積みしていたバベルの塔と同じ。バビロニアからオリュンポスに最近移転したばかりだ。オリュンポスは、お洒落な街なのだが、かつてオリュンポスのスペインBarでピホな二人組の女の子に、ねねちん共々心なしか小馬鹿にされた想い出のある場所だ。うまい呑み屋がありそうなので、楽しみでもある。


で、面接の結果、無事内定。うまれて初めての内定。そして、うまれて初めての日雇いじゃない石積み。お抱えの身ってやつだ。

冷静にさらっと書いているが、この決断はおいらにとってはものすごいことだ。普通ここまで悩まないんだろうけど、美容院でも「自由人ですね」と揶揄気味にいわれるようになって久しいおいらが、ここまで粘った「自由人」の生活を捨てたのだ。諦観の境地と共に。

これまでの人生において「大きな節目」と呼べるのは家が全焼した時と、スペイン移住の時だったが、今回の決断は確実に3つめの節目となるに違いない。まぁ、何年我慢できるかわからんが・・・さすがにそうもいってられない年齢なんだよな〜これが。嗚呼・・・。

美容院で思い出したが、お抱えの身になるにあたって、伸びきった髪を切りに行ったのだが、Nueva Masaquito=イカロスになるのにそのままじゃつまらないので、パーマをかけてみた。7年前くらいに一度かけてみたのだが、その際はボンジョォォォォォルノォォォォォなイタリア人っぽくなってしまって、お嬢あたりに大爆笑されたのだが、今回もしっかり笑える感じにできあがった。

美容院でカタログみたいなのをみせてもらって、「お客様の髪質と長さだったがこんな感じでいかがですか?」と示されたモデルがかなり男前で似合っていたので、思わず「おお!コレでお願いします」といったのだが、身の程知らずとは恐ろしい。なんか今流行のマリアでもやってしまったかのごとくぼ〜〜〜っとしていたのか、自分の年齢と風貌を完全に無視してしまった決断であった。

美容師さんの腕が悪いわけではないのが、あきらかにサンプルとは全く様相の違う髪型ができあがった。普段はまずつけることのないワックス(ファイバーがなんたらとか)をつけて、髪をツンツン+盛り上げて完成だったのだが・・・顔はおっさん、頭は今時の若者・・・。

その時ほど「身の程を知れ!!!」という罵声が似合う瞬間はないだろう。おっさんはおっさんらしく、おっさんのままでいればいいということを釘さされた感じ。

で、イカロス生活初日。今日は一日中研修。出社から退社まで。途中、新入石積み職人として自己紹介をすることになったのだが、出戻りなため恥ずかしい恥ずかしい。江戸時代とか離縁状をもらってで戻ってきた女性の気持ちがよくわかる。おいら自身は「いや、話は向こうから来たんだし・・・」と慰めることもできるが、そんなこと皆は知らない。「なんで辞めたのに戻ってきたんだ?辞めたはいいけど、この不景気で再就職出来ずに泣きついてきたのか?」とか思われてたらどうしよう。まぁ、それもどうでもいいんだけど。

ということで、三十路も中盤にさしかかっての、生まれて初めてのボーナスゲッターとなった。麻子ちゃんに「帰国したらボーナスゲッターだぜ!ふふふん」と自慢したスペインから帰国する直前だから、かれこれ3年。ようやく実現されたわけだが、今回の旅の時に言われた麻子ちゃんの「え〜〜落ち着いちゃうの〜〜〜」という台詞が未だにリフレインする。まだまだ心に隙間があると思われる。

とにかくだ・・・落ち着いたのだ。落ち着いてしまったのだ。

今後は、以前使っていた免罪符「出世払い」を使った相手に、恩返しして生活していくつもりだ。いったい何人いるのかわからないが、いまから戦々恐々だ。

しばらく決断の重さに押しつぶされてローギアーな日記が続くことだろう。