その名はネストル

まずは地理からいってみよう。

スペインはPais Vasco(バスク地方)の州都Vitoria(ビトリア)

人口は20万ちょっと。

かつては首都であったLeon(レオン)から少し西にいったところにあるAstorga(アストルガ)

人口・・・1万3千人!!!

そういうところ住みたいよ。バビロニアの一日の通勤客の何分の一なんだ・・・気になるから調べてみたら一日平均322万人だって。マドリッドの人口より多いさ。で、JRだけで150万人だって。バルセロナの人口やね。

へぇ〜。ちなみに我が町Utielの人口調べたら36000人だって。アストルガよりは多いけど、近いんじゃないか?って、街の規模が違うけど・・・。本物のUtielも12000人。ほほう・・・アストルガよりも少ないのか・・・。


さて・・・どこから話せばいいんだか・・・。

mamiさんからネットで知り合ったというスペイン人を紹介してくれるという嬉しい申し出があったのが先月のこと・・・だった気がする。
(mamiさんについては2007年7月22日の日記を参照

说到西班牙人、就正樹来

スペイン人の話がでたらおいらあり!と巷(どこの巷だ?)で噂になりたいので、快諾するが、実は大きな不安がなくもなかった。これはmamiさんにも当の本人にも話をしたことなのだが・・・。

日本に遊びに来るスペイン人はアニメ(または漫画)オタクが異常なほど多いのだ!!!

これが北海道とか、新潟とか、長野とか、岐阜とか、大阪とか、土佐とか、九州とかにくるってんだったら可能性は低いのだが、東京はいかん。秋葉原を抱える東京はいかんのだ。ちなみに、東京でも、日本人の恋人がいるとかだったら問題はない。

日本に来る彼らは「日本の文化に興味がある」と勿論いうが、その文化というのが、アニメだったり漫画だったりするのだ。

別においらはアニメや漫画を否定しているわけではない。おいらも立派な漫画オタクだし、アニメだって普通に見る。「文化」といわれても「うん、文化」って答える。

じゃ〜何が困るのか・・・それはいろいろあるのだが・・・

まず、そんな彼らは総じて「スペインが嫌い」ということが多い。日本人(特に東京の人間かな?)が「日本を嫌い」というのは良く聞くが、スペイン人が自分の国である「スペイン」を嫌いというのは、おいらの中ではあってはいけないことなのだ。そんなの人の勝手やん・・・って人もいるかとは思うが、スペイン人がスペイン人たる由縁はその愛国心(正確には愛郷心)にあるのだ。彼らもスペインについてケハる(文句をたれる)ことはままあるが、基本的に彼らの話からは愛郷心ダダ漏れなのだ。毎秒3回くらいは自分の故郷を褒める。うん、褒める。

お次は酒。酒というかFiesta(パーチー)があまり好きではない。ぶっちゃけ嫌いなことが多い。もう、スペイン人がスペイン人たる由縁は・・・(中略)・・・なのだ!彼らも30を超えたあたりから落ち着いてきてFiesta三昧な生活からは徐々に遠ざかってはいくのだが、それでも同世代が集まると、おいらが「モウソロソロ・・・アシタハヤイモノデスカラ・・・」といっても、「ベンガ!バモース!」(つべこべ言わずに来い!)と引きずり回される。ちなみに、それはスペイン人だけじゃなくって、「スペインにいるドイツ人」限定で同じ。

さらにあげると、そんな彼らは日本が好き。日本を尊敬しちゃってる節さえある。スペイン人なのに・・・。日本は自分の国だし、歴史も文化も面白いけど、彼らが一様に尊敬するのは・・・アニメだったり、漫画だったり・・・しつこいようだけど、それはそれでいい。個人の趣味だし、おいらが口に出してあ〜だこ〜だいうことではない。んだけども、おいらが話したいスペイン人は違うのだ。おいらが話したいスペイン人はスペインをこよなく愛し、もう止めようがないくらいおしゃべりで、酒好きで、Fiesta好きで、でもかなりの侘び寂びももってて・・・というスペイン人なのだ。

完全においらのわがままなのはわかっているが、讃岐にいって蕎麦を食べなくてはいけないという切ない状況は避けたいのだ。Aunque、それが日本での話だったとしてもだ。

熱くなってしまった・・・。

で。mamiさんが紹介してくれるというスペイン人。彼女が知ってるのは4人くるうちの1人ということなのだが、事前に聞いたスケジュールには、しっかりとコミケが入っていたのだ。彼女の友人のスペイン人は、コミケにはいかないで、その日mamiさんと会うことになっているというのだが・・・世の中「朱に交われば・・・」という言葉もあるし・・・とにかく不安でしょうがなかった。

スペイン語を話せるのはとても嬉しい。そのうれしさと酒の勢いで、スペインの話を聞きたいのだが、口から出てくる言葉は「○○ってアニメ知ってる?」、「○○って漫画はみたことある?あれすげ〜面白いよね!」、「スペインには日本のアニメがあまり入ってこないから、友達に頼んで・・・」

悲しくてちゃぶ台ひっくり返したくなる。

サイトのお客さんで日本人と会うのはなんら悲しくなることがないから全く問題ないのだが、スペイン人相手にそういう状態に陥るととにかく切ない気分におそわれるのが怖くなってしまう。

おいらも時々スペイン人に「あんた、ホント日本人?」といわれたから、あるいは同様にスペイン人たちから「なんだこのスペイン馬鹿は・・・」って思われていた可能性もなきにしもあらずだ。けど、一人で田舎街のBarにはいってスペイン語を話したときに「およよっ・・・あんさん・・・日本人だろ?」って喜んでいるような顔をみると、それも杞憂という気もしてくる。

まぁ、いい。とにかくそんな葛藤があるのだ。

しかし、やっぱり说到西班牙人、就正樹来でいたい。怖がって会わないよりも、会ってから切なくなったほうがまだマシだ。

というわけで、夕方、mamiさんに連絡し浅草に向かう。保険といってはなんだが・・・マリカルメンも連行することに。「雷おこしね〜」とおいらのドキドキなど余所にした母親の暢気な台詞を背に受け家を出る。

隅田川沿いのベンチに座っていた二人を無事発見し合流。マリカルメンとmamiさんは初対面なのでお互いご挨拶。おいらはスペイン人と握手する。

「ネストです」
フェルミンです」(実際は勿論フェルミンとはいっていない)

ネスト・・・ネスト・・・初めて聞く名前だった。本名を聞いてみると「ネストル」ということが判明。スペインでは「ネスト」がいいやすいのかもしれないが、おいらは「ネストル」の方がスペイン人名としてしっくりくるので、途中から「ネストル」と呼んだ。

まだ微妙にぎこちなさがとれていないおいらは、観光案内する形で様子を見ることにする。いくところは決まってないが、考えている時間ももったいないので、とりあえず上野に行くことを4人できめ、電車で戻る。

上野公園に行く予定だったというので、時に何も考えずにそこへ向かう。途中途中の西郷さんの銅像のところや、彰義隊の碑、稲荷神社、不忍池で、得意の歴史知識でガイドを試みるも、あまりネストルは興味がなさそうであった。ただただ、彼はひたすらと話し続けた。

序盤はこれまで旅してきた他の街(神戸、京都、奈良など)の話を質問したことから、その感想などを話していたのだが、途中からは完全にスペインの話にうつった。

徐々に、体がほぐれてきたおいら。気分がよくなってきたので、強制参加で下町ピンバッチみたいなガチャガチャ(100円)を4人でやり、ネストルにすべて押しつける。「お土産だ!」と。

面白かったのが、うちら三人のフォーメーション。散歩は基本的に2人ずつにわかれて歩いていた。片方はネストルと一緒に。もう片方は日本人同士という形だ。

で、3人とも、ここまで長時間の生のスペイン語は久しぶり(まぁ、おいらは3月にガッツリ話してきたが)だったのもあり、なんとな〜くスペイン語に疲れてくると徐々に後ろに下がってくる。そうすると、暗黙の了解というか、テレパシーというか、アイコンタクトというか・・・下がってきた人間といれかわるように、日本人二人組の片方が上がってくる。だから、当然といえば当然なことなのだが、ネストルが一人になることは決してなかった。

おいらはネストルとレオンやその近郊の街の話で盛り上がった。住んでいるビトリアにはいったことがなかったのだが、レオンのそばにはおいらが大好きなBenabente(ベナベンテ)やZamora(サモーラ)、Toro(トロ)などがあり、さらにはつい最近の旅では、まさにレオンで14軒ものBarを梯子してきたばかりだったからだ。日本人には多少マニアック間のあるLogron~oやLugoの話ができたのも大きかった。

上野公園のあとは、買わなければいけないというお土産探しを手伝うために、アメ横を奔走する。

ネストルはどうも金持ちなのか、おぼっちゃんらしく、なにやら大量のおみやげを頼まれていた。「金ないよ〜」といいながらも、彼のお土産リストには沢山の人の名前と、頼まれたものが書かれていた。中には花札を頼んできた友人もおりびっくりさせられた。

土産探しにも疲れたところで、「呑み」に誘ってみる。ただ「酒は呑まない」といわれたらせっかくほぐれてきた体がまたぎこちなくなってしまいそうなので「軽く食べない?」という誘い方をした。ネストルにはそのおいらの心の機微がとれたとは思わないけど(笑)

呑みの場でもネストルの話は止まらなかった。もう、見事なほどのスペイン人っぷりである。彼の会話の量に比例して、おいらの安心度も大きくなっていき、気がついた時には・・・

「月曜日空いてるから土産買いに行くのをつきあうよ!」

と言っていた。


「鎌倉いった?え〜〜鎌倉いってない?いかんといかんな〜あそこは・・・素敵なところだ。じゃ〜前日にうちに泊まりきて、最終日に行こう!!」

と誘っていた。

なにもかもが杞憂で終わったさ。