番頭Manoloとデート

目覚ましが鳴る前にきちんと目覚め、番頭Manoloと会ってきた。

待ち合わせは10時半に通い婚Bodegaの前。5分前くらいに到着し、タバコをくゆらせながら番頭Manoloを待つ。3分もしないうちに番頭Manolo到着。スペイン人なのに、時間通りに来たことにびっくりする。すべてのスペイン人がそうとは言わないが、待つ覚悟でいた方がいい。これスペインでの「おばあちゃんの知恵袋」。違うか・・・。

とりあえず、うちの前のBar Irun~aへいくことにしたが、まだ早いのか閉まっていた。仕方がないので、Peris y Valeroの普通のBarで遅めの朝食。飲み物は何にしようか考えていると

「Masaki!Vinoか?Cervezaか?」

と番頭Manolo。

さすが・・・番頭Manolo・・・頭が下がる。まさかVinoまで選択肢にはいってるとは。まだおいらはこの領域(午前中にVinoを呑む)域までには達していない。

かっ喰らうように、Morcilla(豚の血ソーセージ)のBocadilloを詰め込み、Cervezaで流し込む。時間はあるのに、つられて慌ただしい食べ方になっているおいら。

職業柄か、「早飯」スタイルが身に付いているらしい。

5分ほどで一本目のCervezaを飲み終わると、2本目に突入。このBarには30分くらいしかいなかったのに、結局3本ものCerveza(Tercio。330ml)を飲み干す。

お腹タプンタプンのし。

番頭Manoloにいろいろ教えて貰おうと、今日は観光客みたいにValenciaの地図を持参した。それに書き込んで貰う。

2ヶ月ほど前、まだ通い婚Bodegaが健在だったときに、番頭Manoloに教えて貰ったBodegaの場所をきちんと聞く。ペンで地図に印を付けてくれる番頭Manolo。

番「これから、その店いってみるか?」
お「え?今日土曜日だけど開いてるの?」
番「開いてる、開いてる!」
お「うん、つれてって・・・」

「こりゃ午前中からへべれけへべれけ千鳥足か〜」とウキウキしながら89番のバスにのってBenimaclet(学生がたくさん住んでいるZona)地区へ。

バスの中で番頭Manoloとこれまでないくらいいろいろなことを話す。彼曰く、仕事のときと、プライベートは全然違うとのこと。日本でだったら当たり前な、というか、そうせざるを得ない環境だが、スペインでBarのCamarero(ウェイター)でも、きちんとその辺を使い分けているということが少々意外であった。あの「グヘグヘグヘ」という笑い方は、プライベートでも健在であった(笑)

実は番頭Manoloのスペイン語は少々聞き取りづらい。単語がどうこうという問題じゃなくって、滑舌があまり良くない。歯の問題(下の歯があまりないっぽい)なのだろう。スペイン人だったら問題なく彼のスペイン語を聞き取れるくらいの滑舌なのだが、おいらはたまにまったくもって聞き取れていないことがある。

番頭Manoloも他のスペイン人の例に漏れず「言ってることがわからなかったら、ちゃんと聞いてね!」と親切にいってくれたが、それをやってるとスペイン人との日常会話の場合、いつまでも進まない。あまりいいこととはいえないのだが、わからなくても問題なさそうなところは適当に相づちを打っておいて、わかるところはつっこむようにしながら会話する。

15分後、Benimacletに到着。番頭Manoloお勧めのBodegaはTranviaから5分もかからないくらいの場所にあった。

その5分の間に、番頭Manoloは・・・

「ここの店で前は働いてたんだ!あそこがその前!あそこがその前の前!あそことあそこでも働いていた!このBarrioは、Mi Barrio(「おれの庭」的な意味)なんだ!」

実際に、店の前を通ると番頭Manoloに挨拶する人も多い。客も顔なじみが多いらしく、「さすが番頭Manolo!」と敬服した。

つれていってもらったBodegaのオヤジとたぶんその息子っぽい店員とも仲がよく、Bodega店内をいろいろ案内してくれた。この店の外のシャッターの看板は番頭Manoloがかつて書いたものらしい。

Barra(カウンター)があったので、このBodegaは飲めるし買えるBodegaだと思ったのだが、今は「売り専門」になっているようで、Barraはその名残だということだった。Labradorや通い婚Bodega同様、蛇口がついたたくさんの大きな樽が設置されている。反対側の壁には、VinoやWisky、Ron、Voskaなどなどのアルコール類が、天井いっぱいいっぱいまで据え付けられた棚にぎっしりと陳列されている。

そして、各アルコールには見やすいラベルで、産地別に分けられ、同様に値段をしっかり大きく書いた値札がつけれている。

もう、番頭Manoloそっちのけで、Vinoを一つずつ見るおいら。興奮状態。

番「持ち帰りで、VinoとVermutを一本ずつ、よろしく!」
店「あいよ〜」
番「Masaki・・・持って返るだろ?」
お「え??え??」
番「うちに持って返るだろ?」
お「う・・・・うん・・・」
番「おれがおごるよ!」

ってことで、樽だしVino1.5Lを一本、Vermut1.5Lをおみやげに貰う。

このBodega・・・おいらの知っている他のBodegaよりも値段設定が少し安い気がした。立地条件とか客層の問題なんだろうか?

おいらの知り合いが作っているむちゃくちゃ旨いVino(16eurosで売られていた。他の店では17euros〜25eurosの幅で売られている)も含めたValenciaのVinoをつぶさにみていると、Manoloが近寄ってきた。

番「ここはValenciaのVinoの品揃えがいいんだ」
お「うん、結構いろいろあるね〜」
番「今なかで、どれを呑んだことある?」
お「う〜ん・・・どれも高いからね〜。これと・・・これ・・・あとそれもある・・・これとこれは通い婚Bodegaにあったでしょ?いつかCopaで注文しようと思ってたんだけどさ・・・」
番「あ〜、この2つか・・・これは旨いぞ!」

その二つのVinoとはTondoniaMuga。両方ともValenciaではなく、RiojaのVinoだ。前者が23euros、後者が12euros。買えない値段ではないのだが、買おうと思わない値段だ。3euros前後が専門だから・・・。

番「じゃ・・・このMugaを・・・Masakiにプレゼントするよ!」
お「え??え???このMugaを!!??マジで???」
番「うん。このVinoは旨いから、呑んでおいたほうがいい!」
お「い、いや・・・そうかもしれないけど・・・」
番「じゃ、○○(店員名前)!!これ包んでおいて〜」
お「・・・・Muchisimas Gracias!!!!」

ってことで、まさかのMugaゲット。これはタカシ君と呑まなくては・・・。

あれよあれよと、手には大量の酒が・・・。

そして、突然、再びCervezaを頼むManolo。

番「Masaki・・・呑むだろ?」
お「呑まいでか!!」

番頭Manolo・・・レベルが高すぎる。まだ会って2時間もたってないし、すごい住んだ良い天気なのに、ここまで呑むとは・・・。

一カ所に留まって、Can~a(小さいグラスに注がれた生ビール)をま〜ったり時間をかけて呑むのとは違う。もう、なんていっていいか・・・Cerveza競争みたいになってきていた。

まだおいらが呑みきらないうちに、「次ぎ連れて行ってやる!」とManolo。まだ3分の1くらい残っているTercioを一気に飲み干し、むせ帰りながら親切にしてくれたBodegaのDuen~oとCamareroに挨拶をして店を出る。

お次の目的地は、そのBodegaから30秒の普通のBar。

入った途端、Duen~oやたくさんの客に挨拶をされる番頭Manolo。そして、その全員においらを紹介する。おいらが何人で、いつ帰って、こっちで何をしてるか・・・などなどすべてを早口で紹介。おいらはタダ無言で握手やbesos(頬をあわせる挨拶)をするだけで精一杯だった。

そして、ここでもまたCerveza!!

5本目突入。330ml×5ってことは、約1.5Lだ。

番頭Manoloの腹がどうしてあそこまでふくれているかがよ〜くわかったさ。

ここでようやく打ち合わせに入る。打ち合わせっていうか、おいらの目的が果たせそうな時間帯になる。

早口で話すManoloの合間をぬって、すかさず質問する。

Bodegaの話、Manoloの住所、Manolo自身のこと、通い婚Bodegaのこと、通い婚Bodegaで働いていたメンバーのこと、Manoloの次の職場、そして、Estherの行方

いろいろ聞いたが、一番びっくりしたのは番頭Manolo自身のことだった。

おいらが勝手に想像していたManoloとは大分違っていた。

通い婚Bodegaではもう長いのかと思っていたが、まだ2年半しか働いていなかったらしい。だが、Barを点々として、時にはAlicante、時にはBenidormで・・・と夏の間temporalで働いたりしていた彼からしたら、一つの場所に2年半というのはとても長いとのこと。

彼の他の店員の人物評も面白かったが、Manoloが思っていたよりも「男」であったことになによりもびっくりした。そして、若い頃はそうとうのやんちゃくれだったらしい。それは、彼が過去を回想しながら話してくれた昔話にでてきた単語からよ〜〜〜〜〜くわかった。

番頭Manoloとは、6本目のCervezaを飲み終えたところで別れる。昼飯時間前に用事があるとのことだった。別れたのは1時半で、会ってから3時間しか経っていないが、久しぶりに完全マンツーでスペイン語を話した気がする。疲れはなかったが、頭をフル回転させすぎて、少々クラクラした。

次ぎは、月曜日に、彼お勧めの・・・彼曰く、「Te Gustara!」(絶対気に入る!)のBodegaにつれていってくれることになった。待ち合わせ場所と時間をさくっと決め、地下鉄の駅で別れた。


うっかり家の鍵を忘れてしまい(初めて!)、すぐ側で働いているMi Kyungのところにいって鍵を受け取り、自分の鍵をもって、再びMi Kyungの元に戻る。


3時か4時くらいから、天気が急にいっぺんした。

ものすごい風が吹き始め、雨も降っていないのに雷がなりだしたかと思うと、突然の大雨。Valenciaでは滅多にみれないほどの大雨で、部屋でなにかをしていたManoloは廊下をウロウロしては、外をみつめ


FIN DEL MUNDO!!!!!!
(世界の終わりの意)

と叫んでいた。

それくらいすごい雨だった。

Apocalisisだ・・・。

ちなみに、梅雨とはちょっと異なるが、Valenciaの9月はTormentaの季節で、台風みたいなのが多くなる。そして、雨もちゃんと降る。

誰が教えてくれたか忘れたが、美味しいVinoができるには収穫前の8月に大量の雨が降るといいらしい。そういう年は、良質のUVA(葡萄)がとれ、良質のVinoができるそうだ。

この雨が8月に降っていればな〜〜ってふと思った。

雨がぱったり止んだ夕方、Mi Kyungは仕事にでかけ、ManoloはCastellonの兄を訪ねにいってしまい、おいらと春の二人っきりに。

1人での夕食なので、面倒がって昼食に作って「親子丼もどき」(茄子が入っている)を平らげ、ManoloにプレゼントしてもらったBodegaのVinoを1人呑むつつ、帰国の準備にいそしむ。

人にあげる本と、借りている本、持って返る本を区別し、段ボールに区分けしていく。

大量に持ってきた「○○の歩き方」をどうしようか迷ったが、また買い直すとえらい金額になるし、旅で使っていろいろ書き込んでいたり、年代が10年前といろいろ古く、街の変化をしるには重要な手がかりになりそうなので、かなり重くなるがそれらは持って返ることにする。

かなり悩んで、大分本を「人にあげる本」の段ボールにいれたのだが、それでも持って返る本は多かった。余裕で足りるだろう・・・と思って用意した段ボールから余裕ではみ出す本。

頭が痛い・・・頭が痛い・・・。

送料いくらかかるんだろう。

もう一回考え直すってもんかな〜。