断髭式

先週末から本格的に仕事探しをはじめたわけだが、今日は見つけた仕事を紹介してもらうために新宿へいってきた。向かうは某派遣会社。

10時頃起きてお風呂に入る。

社会人は身だしなみが大事!と、念入りに体を洗う。あまり意味があるとは思えないのだが・・・まぁ、まずは形から入るってもんだろう。

体を洗い終わると髭剃りを開始。


おいらの仕事は職種柄、髭なんかは生やしていても特に問題ないことが多いのだが、今日は面接なので、流石に髭を伸ばしていくのはまずい。丁寧に整えるだけで、そのまま行ってしまうか!!とも一瞬思ったが、のっけから「社会不適合者」の烙印を押され、派遣会社の担当の方に「なんだこいつ・・・バカか?」と思われたまま2時間以上一緒にいるのはつらいので、大人しく剃ることにする。

おいらはが髭を伸ばし続けている理由というのは、まず髭を剃ると顔が若くなってしまうということ(逆説的に言えば、髭を伸ばすと老けるという話もある)。そして、髭はデブ隠しにもなること。でもって、毎日剃るのはめんどくさいという単純な理由の3点が上げられる。あと、髭があったほうが渋く見えそうという、思春期的理由もある。そういうおいらはゲーリー・オールドマンが好きなわけだが・・・まぁ、ブツブツいいながら髭を剃ったわけだ。

1年ぶりくらいに見る自分の素顔・・・

やっぱり2重アゴになった。エグエグ。

やっぱり若くなった。エグエグ。


スペインからの帰国直前に体重計を手に入れたので計ったのだが、白米のうまさにまけて、おいらの体重は右肩上がり。すでに3kgくらい太ってしまった。おいらは太るとまず顔に出てしまうタイプ(腹はVinoとかCervezaのせいなのだが・・・)。

すでに剃り終わってしまったのであとの祭りなのだが・・・・やっぱりちょっと後悔した。

流石に1ヶ月弱で3kg増はヤバイだろ〜。

まぁ、日本に慣れてくれば戻るだろうけど・・・。

髭も剃ってさっぱりしたところで、スーツに腕を通す。前回の一時帰国の時の結婚式できたから一年ぶりとなるが、仕事関係で着るのは5年ぶり。

よく「板に付いてくる」といわれるが、あれってランドセルのようにスーツが体にフィットしてきて似合うようになるんだろうか?それとも、自分の目を含む人の目が慣れてくるからおかしくなくなってくるんだろうか?

まぁ、そのいづれかが理由だったとしても、おいらの状況には当てはまらず・・・全身鏡にうつった自分の姿をみて大爆笑。

似合わないの何のって!!!

人にはよく「アホ!おいらは意外とスーツ似合うんだよ〜!」といってはいるが、明らかに似合ってないのは自他共に認めるところ。

なんていうか・・・30才にして新卒さながらのオーラに、思わず「ううううっ」とうめきたくなった。

なんとかして「自然ぽさ」を出そうと努力したが・・・とてもじゃないけど無理だった。歩き方をふてぶてしくすればいいのかな〜などとも考えたが、アホ社会人になりそうだったのでやめることにした。

あ、そうだ。中学校、高校と6年間ネクタイを結び続けてきたからであろうか・・・かれこれ10年以上たった今でも、ネクタイだけは余裕綽々でむすべた。思わず・・・

「すげ〜おいら・・・ネクタイだけは完璧じゃん・・・」

と鏡の前でひとりごちた。

ほとんど新品のスーツや靴を身に纏い、いざ出陣!!!

といっても、勇ましくでてきたわけではなく・・・ママンとパパンに顔を合わせて大爆笑されるのもイヤだったのでコソコソでてきた。

電車の中では、なるたけ自分の置かれている境遇について考えないように、簡単に読めそうな「スペイン民話集」エスピノーサ著 岩波文庫)と音楽でごまかす。

とりあえず新宿までいき、目的の某びるぢんぐに到着。予定よりも30分も前にきてしまったので、喫煙所でふてぶてしくタバコを吸い、缶コーヒーを飲む。

それにしても・・・このあたりは高層びるぢんぐが多い。とても無機質な感じがして、スペインでの生活を思い出す。なんか、ちょっとだけ帰りたくなったが、「いかんいかん!」と思い直す。

目の前を続々と歩いていくスーツ姿の男女に目をやりながら、ま〜ったり時間が止まったようにタバコを吸う。

なんかもう別世界。Otro mundo。数日後にはおいらも仲間入り。きっと昼間と夜の、平日と週末の顔は別人になるんだろうな〜。スペインでは昼間だろうが夜だろうが、平日だろうが週末だろうが、いつも同じ顔だった。そう考えると、メリハリがあって、捨てたもんじゃない。

まだ約束の時間まで20分もあったが、「ここは日本だからそれが基本!」と巨大びるじんぐにのりこむ。いや、冗談じゃなくって、これから敵討ちにいくぞ!!って気分で中にはいっていった。

なのに、びるぢんぐ内は「殿中でござる!殿中でござる!」っとはなってくれず、びるぢんぐと同じく、人々はビデオを早回ししたみたいにテクテク素早くあるき、あいかわらず無機質なまま。

盛り上がってるのはどうやらおいら1人らしい。

つまんないの。

階毎によって区分けされたエレベータに乗り込み、会社のある階のボタンを押す。

33階。

「すげ〜〜〜33階かよ〜〜〜!!!高けぇ〜〜〜!」と思って数秒後、33階に到着。

「うげ!!もう着いたの??もう着いたの?マジで?心の準備できたないよ!うちのPISOがあった6階に行くよりも早いじゃんかよ!!何事だよ!」

人の歩く速さだけでなく、エレベーターまで高速。

日本のびるぢんぐ・・・恐るべしっ!!


おりた階もこれまたものすごい無機質。いや、シンプルといったほうがいいんだろうか・・・。広々とした廊下に、自動販売機と消化器がぽつね〜んと置かれているだけ。廊下上に掲げられた通路表示も各会社の方角だけと最低限しかかかれていない。そして・・・おそらくこれが一番原因なんだろうが・・・隅から隅まで掃除が行き届いている。

人がいる気配がしないのだ。

ちょっと怖くなる。

会社はすぐに見つかった。中に入ると電話が一台。

「ご用の方は内線で及びください」

あいかわらず中は人の気配がしない。それもそのはず・・・みな営業にでているのだろうか・・・中には1人しか人がいなかった(笑)

お「今日お伺いすることになっていた○○ですが、○○様いらっしゃいますでしょうか?」

丁寧語完璧!

まだまだいけるぞおいら。

奥から女性が1人やってくる。

女「えっ、あっ!もういらしたのですか?まだ20分前ですよね!?」
お「え・・・ええ・・・・」
女「おくでお待ちになられてもよろしいのですが、おそらく退屈かと・・・」
お「どっか時間つぶせる場所あります?」
女「えっと・・・下に喫茶店がございますが・・・」
お「(金ね〜ってば。電車賃でギリギリだよ)」
お「え〜っと・・・じゃ、この階に休憩できる場所とか・・・」
女「この階にはないですね〜自動販売機はございますが・・・」
お「そうですか・・・じゃ、本もってきたんで、中で待ちます」
女「わかりました・・・」

おいらの中では、日本社会ってのは「30分前行動」が基本だとおもっていたのだが・・・どうもそれは迷信だったらしい。日本でもぴったりに来た方がいいのだろうか?でも、場所によっては10分前にこなければ、怒られそうなところもありそうだし・・・。

ママン・・・日本難しいです。


ってことで、20分間、「スペインの民話集」を読んで暇つぶし。この本の内容と、今自分が置かれている環境の差があまりにちぐはぐで、ニヤニヤしてしまった。

途中、目の前におかれてPCをちょっとだけ・・・といじってみたら、ガイダンスが始まってしまう。

「ぬおっ!!いかん!!いかん!!!どうやれば、さっきの画面に!ESCか?ctrl+Qか?ctrl+alt+delか???いか〜〜〜ん!!」

いろいろ試しているうちに・・・ブルー画面(エラーのときに出る画面)

面倒くさいので、しらばっくれることにした


20分後、おいらの担当とおぼしき女性が入ってくる。妙齢といっては失礼だろうが、隠せる部分が隠せなくなってきてる雰囲気がする女性。

その女性に、会社のシステム、支払い、規則などなど基本的な説明を受ける。

その後、PCを使った15分くらいのテストとなる。

余談だが、先ほどおいらがブルー画面にしてしまったディスプレイ。そのあと証拠隠滅のために適当にいじってシャットダウンした状態にしておいたのが・・・。

女「えっと、では、キーを適当に押して頂ければスタートします」
お「え〜PCついてないんですけど」(あくまでしらをきる)
女「え?あっ!!もうしわけございません!」

ものすごい勢いで謝られる。しかも、PCが強制終了したためシステムチェックと再起動の間、2人で無言でいる羽目になる。しかも、女性はおいらの真後ろに背後霊のように立ちつくしたまんま。

そして、何度も何度も謝る彼女。

いたたまれない気持ちになった。

ごめんなさい。ぼくがやりました。

問題形式は3つあった。

一つ目は、左右にある数字がまったく同じかどうかをチェックしていくもの。二つ目が各枠に3つずつある英単語を辞書の並び通りに数字をつけていくもの。で、三つ目が計算問題。これらの問題は各3分ずつの時間制限があり、どれだけ適格に多くの問題を解けるかというものだろう。

事務の仕事とかならなんとなくわからんではないが、おいらの仕事には、ぶっちゃけま〜〜〜ったく関係ないという気分でいっぱい。っていうか、「これで何がわかるんだ??」と半信半疑なまま受ける。いうたら、ま〜〜ったくやる気なしの緊張感なし

だもんで、ほおづえついたまま鼻歌混じりでテストを受ける

で、実際受けてみても、これが何の役に立つのかま〜〜ったくわからなかった。

一つ目の数字合わせの問題は、たとえば

124857390394578 124857390399578 
357847584937593 357847584937593
25 25

とかなっていて、左右二つの数字が同じなら○、違うならノーチェックというもの。

二つ目は

Slow
Snow
Swan

とかなってて、1,2,3と順番をチェック

三つ目は

 123
× 56

            • -

というやつ。


試験終了後、すぐ隣にある、良く討論会とかで、制限時間が終わるとチ〜ンとならすベルがおいてあるので、それを鳴らして担当の女性を呼び出す。

合理的だけどとてつもなく無機質

テスト結果は印刷されるようで、その女性が成績を教えてくれる。これは予想外。

解いた問題数は忘れてしまったが、一つ目の問題は全問正解、二つ目は1問不正解、三つ目は全問正解という成績だったのだが・・・一つ目の問題はかなり成績優秀だったらしく、妙齢女性に大いに褒められる。

そりゃ、誰だって褒められれば嬉しいもんさ。

テストの成績なんて、日本史と世界史以外ろくな点数とったことないわけだし・・・。

ってことで・・・

し、しまった!!!!こんなことなら、真剣にやればよかった!!

と思ってもあとの祭りだった。

あ〜もっと褒められたかった!!!

もしや、まだまだ社会人としてやってけるんじゃないの〜おいら・・・。

さっきまで「意味わかんね〜」とかいってたけど、きっとこれは何か意味があるに違いない!!!!

そう思いこむことにする。

テスト終了後、担当の女性が変わる。この女性はおいらがメールでやりとりしていた女性で先ほどの女性よりも全然若い。そして、えくぼがあった。

結構えくぼに弱いおいら・・・俄然やる気出る。

彼女とはインタビューと言うことで、職歴やら自己PRやら技能やら希望条件・職種などを事細かに伝える。

おいらはよく知らないが大手の派遣会社なので、そのあたりの気遣いは丁寧で、何度も何度も確認していた。

で・・・

職歴。

ほとんどないので5分もかからないうちに終わる。スペインに留学していたことを言った方がいいのか、言わない方がいいのかわからず、大分遠回しに考えるようにして話していたが、3年間働いてないことを聞かれたので、大人しく答える。なんかちょっとだけ尋問されている気分に陥る。

自己PRや技能に対しても、実は特にない。性格についてや、自分が使えるソフトやプログラム(?)なんかを事細かに伝えただけ。当然といえば当然なのだが、他人行儀なやりとりに、笑いが欲しくなりおちゃらけたことをいいたくもなったが、なんとか耐えたいたのだが、後半はもうタメ語に近い感じで与太話になっていたような気がしないでもない。まだ、真面目モードは3分くらいしかもたないことに気づく。

職種や正社員登用についても難しかった。仕事はWEBかDTPと決めてはいるので、その方面で探すつもりではいるのだが、実際のところをいってしまえば「なんでもいいし、どうでもいいです〜。とりあえずリハビリですから〜」といいたいわけで・・・だけど、そんなことなぞ言えるはずもない。もちろん、会社にはいったらしっかり、真面目に働くが、別にその会社に骨を埋める覚悟があるわけではないわけない。いうたら、「社会同化政策」の一環でしかない。でもって、現実問題、金ないと生きていけないし。WEBの仕事だったら、飽きることはないので、別に現時点では深く考えていない。なんとでもなるし。でも、向こうにあまりに真剣に「今後を見据えた」質問をされると、なんて答えていいのか・・・いや、なんて答えたら正解なのかがわからなくて、しばし考える羽目に。まぁ、最終的には、正直にNoとだけ答えておいた。おいらの考えることができる将来って、頑張って3年だけなんだよね〜。それか、50才以降のどちらかだな。なんて両極端な・・・。まぁ、3年後には、どうしてるかよくわからんし。でもって、そういう状態が好きだし・・・なんとかなるでしょ。


ほんとおいらっていい加減だ・・・と自分で思うが、こればっかはどうしようもないんだよね。うん。

面接は2時間半後の4時頃終わった。

新宿をふらついたり、誰か呼び出して新宿で一杯・・・なぞとも考えたが、金ないし、携帯ないし・・・ということで、道草することなく帰宅。

帰ってすぐ、派遣先の会社に送るという、おいらがこれまで作った作品のURLを一斉に送る。5年間の仕事探しのときは、まだ動いているサイトがあったので困ることはなかったのだが、すでに3年以上経ってしまったため、おいらがやっていた会社のサイトなんかも、すでに様変わりしてしまっており、なかなか作品として提出するものが見つけられず。それでもなんとか集めてきてURLを送る。

このサイトは流石に教えることはできなかった。というのも、人をネタにしてやっているこのサイトをこれから自分が働くであろう会社に教えるのはどうも具合が悪い。いや、悪いどころじゃなくて、悪すぎる。

ってことで、「3年間、お仕事してませんが、WEB作成の方は大丈夫ですか?」という質問に「全然問題ないです!」と答えたものの、3年の間に作っていたサイトを紹介できないという矛盾を抱える羽目になる。とりいそぎで作ったコスタのサイトを紹介することで、なんとかごまかしたが・・・厳しいのぉ〜。


敬語と丁寧語を話し続けたせいか、家に帰ったときには疲労困憊していた。

ちょっと息抜きにバガボンドでも読むか・・・とベッドに横になったと思ったら、しらないあいだに寝てしまっていた。

「り、履歴書!!!」

と起きたのは夜の11時。

腹が減ったのでスペイン時間で夕食を食べ、履歴書を作成。

「得意な科目」!!??

「保護者の名前と印」!!??

・・・こ、これって・・・なんか意味あるの?

・・・こ、これって・・・バイト探しようの履歴書?

・・・こ、これって・・・もしや10年前に買った履歴書?

ま、いっか・・・。

社会人復帰の道はまだまだ険しいようだ


追記
おいらのいったびるぢんぐの側に、なにやら未来少年コナンにでてきそうな、さらに大きなびるぢんぐを発見。

「・・・・なんだっけ・・・これ・・・みたことある・・・この2つのタワーみたいなの・・・も・・・もしや・・・・これ都庁?都庁じゃないか???」

街中にある地図をみてみたら、はたして都庁だった。

都庁なんて、大学生の頃、酒瓶もって都庁で飲んだくれ企画やったときにしかいったことない。

すっかり忘れてたよ。

へぇ〜これが都庁か〜〜〜。

すっかりお上りさん。