死域

書く前からかなり長くなりそうな気がして気が滅入る・・・。

Bueno・・・a ver・・・。

今週もやる気ないのに石は一杯。そんな状況での金曜日。以前ほどの「どうしよ感」(焦燥感)はないけど、やっぱりうれしいのが金曜日。

さ〜今日の対戦相手は・・・。

石積みの合間にいろいろ考える。

9月に入ってから、どういう因果関係があるのか・・・全くないのはわかっているが・・・、サイトのお客さんからのメールが多い。そのうち何人かは「呑もう!」というもの。「遊びましょう」とかではなく「呑もう」。しかもご丁寧に「飲」ではなく「呑」の方の「呑もう」を使ってくる人もいる。心ときめかないわけがない。

が、そんな時に限ってすでに週末の予定が埋まっていたりする。わがまま言わせてもらえば、一月一人がとてもうれしいのだが、そんなこと相手は知ったこっちゃない。

カレンダー調整に頭を悩ませながら、ふと思う。

なんか「ひきこもり生活」・・・スペインでやっているときは大義名分もあったし、ガイドもしてたからいいけど、同じ状況でも日本に帰ってきてしまうと「出会い系サイト」になってきてないか?Valenciaの伝道師たらんとしているサイトなのに・・・ネタないから全くもっておざなりだし。まぁ、人と話せれば何でもいいんだけどさ・・・。

あれこれ考えても選ぶ要素となるものがまったくないので、一人一殺、北一輝でメールの早いもの順に会っていくことにする。

今日の石積みは中途半端な待機時間が多く結構暇ではあったのだが、そこは定時近くでもお構いなしに石を投げ入れてくる「賽の河原」。「早く帰れるだろうか・・・」とドキドキドキドキ。生きた心地がしない。

6時半になった時点で石が投げ込まれないので、ここぞとばかりにメール。「たぶん大丈夫」と。まだ「たぶん」をつけているのは、信用できないからだ。

で、案の定、定時15分前に石投げつけられる。悪名高きカーリーだ。

カ「すいませ〜んヨモツシコメさん・・・ちょっと連絡遅くなっちゃったんですが、これ・・・2つお願いできます?」

お「(ぬがっ〜〜〜!)」

なんだよ、この侘び寂びのなさ・・・あと15分なんだから、帰らせろよ。

っていうか、このなんていうの・・・金曜日だというのに当石積み場の推奨環境:残業みたいなのやめません?ホントに。金曜日くらいさ〜蜘蛛の子散らすようにかえろうよ。


まぁ、もらってしまったもんはしょうがないので、ぶつぶついいながら作成し始める。もらった原稿を見ると、一つは30分ほどで片づくような修正原稿だったが、もう片方はこれからまともにやったら余裕で9時はすぎそうなデザインもの。

ホント何考えとんじゃ。

タダでさえセンスのかけらもないのに、やる気ないときにやってもろくなもん作れないし、今から作ったって確認されるの月曜でしょ?もう相手の石積み場の人、帰っちゃってるよ。絶対。

そう推測して、7時半近くにカーリーのもとに。

「これ、来週でいいですかっ!!!」

ちょっと語気を強めて、有無を言わさない状況を作る。

「え・・ええ・・・いいですよ」
「じゃっ!」


電車の中。

今日の会う人はスペインに3年近く住んでいたという35才の女性。半年の留学を一度してから、もう一度移り住んだという。期間的にはおいらとは変わらないが、呑んだくれていたおいらとはレベルが違うだろう。しかも、年上。我が姉・・・いや、母である姐御みたいな人を少々想像する。ふと「Masaquito!ちゃんとご飯食べてる!?」と背後から姐御の声が聞こえたような気がしたが、気のせいだった。

姐御を思い出した瞬間から、少々ヒヨる。よし、今日は先輩の胸を借りるつもりでいろいろ教えてもらおう・・・という姿勢に変更。そして、これを気に「敬語が使える男」としてデビューすることを決意する。題して「Masaquito敬語化計画」だ。

日本人として、やはりそのあたりは大事っぽい。使わないで大丈夫な人には使わないのもいいが、やはり石積み場にいるとなるとそうもいってられない。今の石積み場でも、ちゃんと敬語というか丁寧語を使ってはいるが、ふと瞬間になれなれしくなっている自分に気づく。

ク「ヨモツシコメさん、ちょっといいですか?」
ヨ「うい〜!」

とか

ゴ「これ今日中にいけますか?」
ヨ「余裕たい!」

返事系でのミスが多く、たまに苦笑される。

渋谷駅について電話する。

お「今どこにいらっしゃいますか?」
相「TSUTAYAです」
お「じゃ、そこ行きます」
相「はい」
お「で、僕の服は・・・茶・・・じゃなかった・・・ん?これ緑?いや・・茶?」
相「ツ〜ツ〜ツ〜」
お「み・・・みどり・・・」

行けばどうにかなるとTSUTAYAの映画館前に。それらしい人がおらずキョロキョロあたりを見回すと、自分に向かってくる人間を発見。

「(わ・・・若っ!!35才???うそつけ〜おいらよりも年下にみえるやんか!っていうか学生じゃないの?でも、本人がそういうなら35なんだろうし・・・やっぱ日本人って年齢わからん。怖すぎる・・・)」

彼女の名前は便宜上マオちゃんにする。

お「はじめまして。なんでわかったんですか?」
マ「サイトに写真あるから・・・」
お「あ・・・そうでした」

敬語使えてる。

お「では、どこにいきましょうか・・・僕が知ってるところっていったら・・・焼き鳥屋くらいで・・・すんごいおいしくて安いんです」
マ「どこでもいいですよ」
お「じゃ、とりあえずそこに向かいますか」

(中略)

マ「色・・・白いですね。」
お「ええ。黒くなってもすぐに引いてしまうんですよ」

まだまだ敬語いける。

マ「でも、話をする人でよかった・・・」
お「いやいやいやいや・・・金曜日のおいらはすごいよ。もう石積み場でコミュニケーションないから、もう話す話す。話まくり。一晩中話して、対戦相手の話す暇ないよ。マジで」

・・・うっかり普通に話してしまった・・・5分で敗退かよ・・・。でも、まだが計画続行。

焼鳥屋のおばちゃんに電話すると席はないというが、もしかして空くかもしれないと煮え切らぬ返事。とりあえず顔は出す・・・と電話を切り、結局向かうことに。

だいぶ顔見知りになったので、以前のように門前払いはされなくなり、「そろそろ空きそうだから、ちょっとだけ待ってて・・・」と愛想良い返事。

10分ほど待ってから二階席へ通される。いつものおすすめメニューを注文し、vamos a ver・・・話始める。

メールでは詳しい話はしなかったのだが、どうも彼女は帰国が一ヶ月おいらより早いというだけで、ほぼ同じ時期に戻ってきて、働いた時期もまったく一緒であった。そして、石積み場の状況も「賽の河原」と似ているらしく、それで日記に共感をもったとのことだった。

匂いは見事なまでにスペイン長期留学者のそれで、会話にテンポがあり、あまり小さなことは気にしない。性別は違うが、タカシ君と話しているような会話であった。

収穫といえば、近所に友達のいないおいらにとっては、ある意味初の自分の地元よりも西・・・しかも、そこそこ近所に住んでいる人間であった。いつもなんかFiestaとかイベントとか旅行を企画するたびに、二時間近くかけてサイタマーニョたちを呼び、相手に「遠いところ・・・」と申し訳なく思うことが多いのだが、マオちゃん程度の距離だったら問題ない。

話初めてしばらくして・・・名前を知らない・・・いや、覚えてないことに気づくも、いまさら聞くのもすんげ〜失礼な気がして心の中で小さく周章狼狽。メールの送信者の部分を思い出そうと努力したが、無駄であった。

いつまでたってもさりげなく名前を聞き出すチャンスがなかったため「いや〜最近、呑みの誘いが多くてですね〜なんか誰が誰だがで・・・」と伏線というよりは、言い訳がましい発言をしたあと、「ごめんなさい・・・名前なんでしたっけ?」。

無事、名前を聞くことに成功。

ついでに、確認のために年齢も聞いてしまう。会ったときからそうだが、どこからどうみても35才には見えないからだ。

お「で、いくつでしたっけ?」
マ「○○才です」
お「え??35才じゃないの?」
マ「違いますよ・・・○○才です・・・35才に見えたんですか?」
お「え、あ、いや・・・そうじゃなくって・・・メールに・・・メールに・・・」

以後、完全に敬語化計画ははるか忘却の彼方へ。

あと前々から気になっていた、日記を読んでのイメージというものを聞いてみたのだが、「もっと根暗な人を想像していた」という返事が返ってきた。

ちょっと面白かった。「ひきこもり」という部分がまずいんだろうか?

マオちゃんとは別に、二代目とり升店員の中国人の子とも話す。なんか今日はやたら「サービス純米酒が多かったからだ。

ここのおっちゃんは閉店間際になると、日本酒の瓶をもってきて「おい、兄ちゃん・・・呑むか?サービスするよ!」と、カラになりかけている日本酒のcopaに再び日本酒を注いでくれるのだ。二階にいるときはおっちゃんがいないので、当然注文した分しか呑めないのだが、今日はそのおっちゃんの代わりを彼女がやってくれた。

たいてい注文するときは、おいらのcopaが空になったときなのだが、そのたびに、マオちゃんのコパと升になみなみついでくれる。しかも、溢れさせる。サービス酒なのに・・・(笑)

まるで中国の昔話とかにでてくる、呑んでも呑んでも酒が減らない瓢箪。

彼女のサービスは、おっちゃんよりもすごく、普通ならコップを升に戻してつぐのに、彼女の場合は二つ別々になっている状態で、コップと升になみなみ注いでくれる。サービスなはずが、明らかに普通に注文したよりも多いし、へたすると二杯分あるくらい。

今になって考えると、その後おいらは杯数の割に死域にはいってしまったのだが、さもありなん。呑めないマオちゃんの分も呑んでいたから、いつもよりも酒量は多かったっぽい・・・。

3度目くらいにサービスにきたときに敬意を表して名前を聞くことにする。

お「名前なんていうの?」
中「チン・ホー!」
お「チン・ホー?」
中「違う。チン・ホー!」
お「(同じヤン!)」

Mi Kyungにも何度も直されたが、どうもおいらは中国語や韓国語の発音は苦手らしい。ビビアンには台湾語、褒められたが・・・。

お「チン・ホーが名前?」
中「違う。チンがファーストネーム。」
お「じゃ〜ホーが名前か・・・どういう字書くの?」
中「鳳凰の「鳳」」
お「ええええええええ!!!!!!!!マジで!!!かっこよすぎる!」
中(キョトン)

彼女には、おいらが「鳳」の字に寄せる浪漫が理解できないらしい。中国では普通によくある名前なのだろうか・・・。

鳳ちゃんのおかげで、いつもの料金で倍近い日本酒を呑み店をでる。普段ならここで帰る時間なのだが、なぜか今日はラストオーダーが10時15分とかなり早く、店をでて時計をみるとまだ11時15分前・・・。

呑み足りないので、とり升のそばにある立ち飲み屋へ。前からスペインハモンが置いてある店ということで気になってはいたのだが、いかんせん高そうで入れなかった店だ。給料日も近いということで思い切って入ってみる。

かなり狭い場所にとおされ、とりあえずVinoをcopaで注文し、呑み続けるが、蒸し暑いらしくマオちゃんが外にでていく。

外にはBodegaのような感じで大きい樽がたててありそこでも立ち飲みができるようになっている。

マオちゃん・・・酔っぱらってる模様で外人が二人いる目の前に陣取る。相席だ。

こちらはスペイン人もどき。相手は外国人。盛り上がらないわけがない。

「英会話だ!英会話!!!タカシ君の前で英語話すと怒られるけど、今なら怒られん!勉強してやる!」と勇んで英語を話し始める。スペイン語混じりのカタコトの英語。

お「オラ!・・・ホワッチュユアネ〜ム。○○××■■△△」
相「日本語で話そうよ・・・」
お「・・・・はい」

あまりにひどい英語だったからか、日本語での会話を強制され意気消沈するも、日本語で盛り上がる。

二人の男はオーストラリア人。片方がなんとなく殺し屋っぽく、一人は甘いモノ好きという感じ。最終的に死域に達したため、何を話したのかまったくもって覚えていないのだが、とにかく盛り上がっていたのは覚えている。一方的にかもしれないが。

甘党男があってそうそう、彼女に向かって

「マオちゃんにすごい似てるよね〜〜!!」

「(こ、この・・・甘党男が!おいらが初対面のとき思ったけど、『いやさすがに初対面でいうのはまずいよな〜経験上いろいろ失敗してるし・・・』と言いたくてもいえなかったその一言を、いとも簡単にいいやがった!)」

が、その甘党男のせいにすることで、「マオちゃん」と勝手に命名させてもらう。

しばらく会話を続けていたのだが、ふと殺し屋の方がおいらになにか宣う。

殺「彼女、大丈夫なの?」
お「え?なんで?」

横をみると彼女がいない。

お「あれ?」
殺「うしろ・・・」
お「ふぬっ・・・」

マオちゃん・・・「死域」突入。しかも、知らない人がなにやら口説いてる・・・(笑)

3人でとりあえず介抱し、少し休ませる。

そのあたりから、おいらも限界にきていたようで、あまり覚えていないのだが、オーストラリア人相手に、猛烈な勢いでスペイン語で話したのだけはしっかり覚えている。

夜、完全に死域を彷徨い、久しぶりにボミる。洗面所がえらいことになっていた。


追記
「死域」とは、感動巨編『北方水滸伝』での北方謙三の造語。とてもいい言葉なので、今後拝借させていただくことにする。人によっては「死域」から脱出すると、大きな成長を遂げるとのこと。


追記2
思ったよりも長くならなかった・・・