カーリー

うちにはカーリーがいる。インドではカーリーは人気があるが、うちのカーリーはあまり人気がない。別に「お局」ではない。年齢はおいらよりも3つ、4つ下くらいなはずだから、お局候補といったところだろう。ちなみに、おいらは石積み経験が少ないので、俗に言う「お局」をみたことはない。ドラマとか漫画でしか・・・。

カーリーはいつもカリカリしている。なんか下手のダジャレみたいだが、本当にカリカリしている。かと思うと、たまに上機嫌になる。カリカリしてようが、ウフウフしていようが、派遣石積み職人のおいらには全く関係ないのだが、今日はついうっかり、藪をつついてしまって、微妙にかみつかれた。

カ「ヨモツシコメさん・・すいません。ちょっと打ち合わせしたいんですがいいですか?」
ヨ「あい。いいですよ」
カ「メールで連絡するのを忘れてしまっていたんですけど・・・ここ・・・ここのヘッダ部分をこのレイアウトで作り直して欲しいんですよ」
ヨ「え"!!??」
カ「ここを!作り直して欲しいんですっ!!!」(ものすごい語気で)

いつもなら「あいあい」と二つ返事なのだが、今回ばかりは思わず眉間にすごい皺を寄せて「え"!?」っていってしまったのだ。というのも、その部分は昨夜、締め切り間際だったのもあり、わざわざ残業してまで、切り出しし、さらにはコーディングまで持って行き、サーバーにまでアップし、校正もし、OKとさせたところだったのだ。

別にメールをうっかり送らなかったことにたいして「え"!?」(con眉間の皺)といったわけではなく、ついつい「マジッスカ!」という感じででてしまった「え"!?」(con眉間の皺)だったのに、なにも逆ギレせんでもええやん。

締め切り間近でアワアワしてるのはわかるが、それはこっちも同じで、だからこそ「え"!?」(con眉間の皺)なのに・・・。

まぁ、おいらの方は別にかみつかれたところで、痛くも痒くもないのだが、カーリーのカリカリに被害を受けているのは、年下の新入社員のオーガ君(独り言の凶暴性が増してきた彼)だ。

オーガ君は、この「賽の河原」に来た当初はとても明るく、よくしゃべる子だったのに(※周りはあまり反応しないが)、今ではストレスでかだいぶ太ってしまい、髪もボサボサ、無精髭のびのびで、さらには昔みたいな屈託のない笑い方ではなく、なんとも乾いた笑いをするようになってしまった、「賽の河原生活」による典型的な被害者になってしまった。彼に会うたびに「ブエルバ!オーガ!」と叫びたくなってしまう。

そのオーガ君は、ちょっとしたミスをものすごい勢いでしかられ、つつかれ、つっこまれ・・・かなりカーリーに恐怖感を覚えてしまったのか、質問があるとなぜかおいらヨモツシコメのところに来るようになってしまった。

石積みに集中すると周りに声をかけられても気づかないおいらは、たまに後ろにぬぼ〜っと立った彼に「びくっ!うおっ!」とさせられることがここ数日何度かある。オーガー君は名前通りタッパがあるため、後ろを振り向いた時、聳えるようにいるので、本気でビビる。

オ「あの〜ちょっとここなんですけど・・・」
ヨ「ん?」
オ「これどうするんですかね〜」
ヨ「う〜ん、たぶんこれでいいと思うけど・・・おいらじゃわからんから、カーリーさんに聞いてみて・・・」
オ「ハ・・・ハイ・・・」(conしょぼん)

そんな感じ。

今日は上の階のラクシュミさんに用事があり、彼女と相談しているとオーガ君もやってくる(彼は平和なこの階出身)。

オ「あの〜ちょっとここなんですけど・・・」
ヨ「ん?」
ラ「はい?」
オ「ここ修正した方がいいですかね?」
ヨ「う〜ん・・・修正した方がいいかもしれないけど、保留かもしれないし・・」
ラ「カーリーさんいないんですか?」
ヨ「カーリーさん?いますよ。いるよね?オーガー君?」
オ「い、います・・・」
ラ「?」
ヨ「・・・・(笑)」
オ「なんか怖くて・・・なんか指示もらった気がするんですが、僕が忘れてるだけかもしれないし・・・」
ラ「・・・・(笑)」
オ「まっ、うちらじゃわからんから、かわいそうだけど聞いてみるしか・・・」
オ「は・・・はい・・・」(conしょぼん)

来たばかりの時はチームを組んだのでずっと石を一緒に積んでいたのだが、ここ数ヶ月、おいらはゴブリン君と一緒に組んでいて、さらには石積み場全体で会話がないため、カーリーのカリカリを忘れていたのだが(他の人に当たってるのは知っているが、おいらにとっては対岸の火事)、まさかここまで相手に恐怖感を植え付けているとはおもわなんだよ。

だが、彼をみていて、急にいろいろ思い出した。

以前やった最初で最後の呑み会と噂に名高い「プロジェクト完了打ち上げ」のときに、あの無口であまり感情を表に出さない、おやつ好き(うすしおのポテトチップスとじゃがりこアメリカンドッグがお好き)のあのゴブリン君が「カーリーがうざい」とぼやいていたことを。

顔も良く、さわやか好青年のクリシュナ君が「カーリーのやつ、ラジオの音量すぐ下げるんですよね。せっかく聞こえるような音量にしたのに・・勘弁してほしいっすよ・・・」となき悲しんでいたことを。

そして、今日のオーガ君。

不憫なり・・・不憫なりよ・・・オーガ君。

おいらも派遣石積み職人じゃなくって、正石積み職人だったらそうぼやいているんだろうか?

賽の河原の受難は続く・・・。

思うに・・・あのちょっとキツイ顔が相乗効果を生んでいるような気がする。あの年であんなに眉間に皺寄せてたらダメだと思うんだけどな〜。

とりあえず、スペイン送りにして生まれ変わらせてみたいけど・・・きっとインテリゲンちゃんだろうから、変わらないんだろうな〜。

まっ、正直

y a mi que?

って感じだけどね。