「賽の河原」の謎に迫る

※初の石積み場からの更新か?

のっけから、しょうもない話。

「こうだくみ?こうだみく?どっちかわすれたけど、なぜ人気があるのさっぱりかわからん・・・」

電車の吊り広告とか、雑誌の表紙とか、渋谷とかの巨大モニターとかに、彼女が写っているのを見るたびにそういっていた。

苗字の「倖田」はいいとして、「來」が先だか「未」がさきだか、いつも忘れるのだ。漢字が似てるからというのもあるが、そもそも覚えるつもりがないというのが一番の原因。このまま覚えないでいてやる・・・と思っていたのだが・・・今日・・・うっかり覚えてしまった。

吊り広告に「くぅちゃん」と書かれているのを読んでしまったのだ。

・・・・「來」が先やん。


朝。

クーフーリンさんにしつこく再確認。なんてったって、「30分後に打ち合わせお願いします」といってくるのに、4時間とか連絡ない人だから・・・。石積みの技術やセンスはピカイチだし、よく言えばで豪放磊落な人物なのだが、同時に茫洋ともいえるし、いい加減ともいえる。おいらはこの手の人とは合うのだが、約束するとなると、ちゃんと考える。

ヨ「で、今日どします?大丈夫なんですか?」
ク「大丈夫だと思います。うん大丈夫。明日(土曜日)も石積みば来ますから、今日は早くあがりますよ」
ヨ「OKです。じゃ〜たぶん僕は先にあがるので、神保町でまってますよ」
ク「8時前にはあがるようにします。」
ヨ「あいあい。店は、僕が好きな店(ひばりちゃんのお店)があるので、そこにしましょう。電話番号知ってるので、早めに席とっておいてもらいますよ」
ク「おお!お願いします」

ここまでしつこく言えばさすがに大丈夫だろう。


昼。
今日も朝からたいした石もなく、干され生活気味。それでもなんとか昼飯まではと、ちびちび石を見つけては、それを積んで時間をつぶす。

切りがよくなった2時・・・ちょっと遅い昼飯。たちあがるおいら。そして、ホント偶然に、同じタイミングで立ち上がったゴブリン君。

ゴ「昼飯ですか?」
ヨ「ええ。ちょっと遅くなっちゃいましたけど・・・」
ゴ「行きますか・・・」
ヨ「えっ・・・えぇ(え"え"え"え"え"え"え"っ!)」

エレベーターに乗りながら考える。「たぶん一緒に出よう」ってことだけでしょう。そのあと、ゴブリン君はきっと「じゃ、僕は弁当買ってくるんで・・・」とか、おいらが行く方向を確認してから、「じゃ、ぼくはあっちに・・・」とかいって別れるんだろう。うん、そうに違いない。

うちの石積み場で、もっとも一緒に昼飯食べる可能性やチャンスがあったのはゴブリン君である。だのに、14ヶ月一度も食べたことはない。昼飯食べおわったゴブリン君と擦れ違ったら、偶然「すき家」で食べ終わりかけのゴブリン君と一緒になったこととかはあるが、文字通り「一緒にご飯を食べる」ということはただの一度さえなかった。

エレベーターを降りつつ、カマをかける。

ヨ「2時って、ちょうどランチタイム終わっちゃうから、店がないんですよね〜。僕はこの時間だと、うどん→Cafeコースです。ゴブリンさんは?」
ゴ「Cafeでまったりというのもいいですね〜。」
ヨ「え?」
ゴ「あの最近出来たCafeにしましょう。」
ヨ「(え"え"え"え"え"え"え"え"!!)」

あの「行きますか・・・」はやっぱ厳密な意味での「一緒に出る」じゃなくって、言い回しの「(一緒に出て)一緒にご飯を食べよう」という意味だったのか!!!

たかが同じ石積み場の社員とご飯を食べにいくだけのことなのだが、おいらにとっては「初めていったにもかかわらず霧がない摩周湖」を見ってしまったというか、映画館で席についたら隣が木村カエラだったというか・・・それくらいびっくりすることなのだ。

おそらく最初で最後であろうゴブリン君との昼飯を楽しむことにする。

例のごとく、ここぞとばかりにいろいろ聞く。ゴブリン君がいつ遊んでいるのかとか、いつから石積んでるとか、うちの『賽の河原』の石積み状況をどう思っているとか、ゴブリン君の人物評(これは遠回しに聞き出す)とか、たまにスペインの話とか、ゴブリン君の庭らしい吉祥寺の話とか・・・徹子の部屋以上に濃い一時間を過ごす。

「今のうちの石積み場がどのようにして形成されたか」という考察のいい判断材料になりそうな情報を入手。なんでも、おいらがここに入る半年前くらいに、社員が5人ほどごっそりまとめてやめたらしい。1人が辞めたら連鎖反応でどどどどど〜んと。現在、おいらなど派遣いれても15人いない石積み場なので、5人の割合は本気で大きい。デザイナーもごっそり辞めたが、ゴブリン君をいれて3人いたライターのうち2人もやめてしまって、今のゴブリン君の鬼忙しい環境ができあがってしまったとのこと。さらに、そのやめた5人は「うちの環境に不満をいだいていた」という5人らしい。その不満の中には、有給がないとか、代休がとれないとか、会話がないとか、土曜日出社とか、そういうのがいろいろあるらしい。

ごっそりあいた穴を埋めるために、そのあたりから派遣を探し始めたらしいが、その派遣も環境のためか、はたまた「派遣」であるためか、なかなか定着しないまま、おいらがここにやってきたということになるらしい。

おいらが入ってからも派遣はかなりの数いれかわったが、おいらの前にも結構いれかわっているらしい。

うちの場合は、「即戦力」を重視して人を捜しているが、それよりもある程度の期間「定住」してくれる人を捜さないとだめなんじゃないだろうか・・・たとえ、育てなくてはいけないとしても・・・。

まぁいいか。

ゴブリン君との会話中、とても気になったのが、しょっちゅう時計を見ることだ。話がつまらないのかな〜と心配するといよりは、早く帰りたさそうな感じなのだ。2回や3回ならわかるが、おそらく1時間の間に20回はみてると思う。自分では気付いてないと思うが・・・。飯食ってる最中はいいのだが、食べてまったりコーヒーを呑んでるあたりがすごかった。2分おきくらいに時計をみていた。
まだ休憩が15分も残っているというのに・・・こちらが落ち着かない。

もちろんおいらは一時間きっかり休みを取るつもりなので、あと5分とかでもタバコに火を付ける。でも、ゴブリン君は会話しながらもそわそわそわそわ。

帰りのエレベータの中・・・ゴブリン君がつぶやく。

ゴ「いや〜1時間フルに休んだの初めてですよ・・・」
ヨ「忙しくても休みはとらないと効率悪くなりますよ〜」
ゴ「わかってるんですが、飯食べるとおちつかなくって。なんか罪悪感を感じるというか・・・」
ヨ「・・・・」
ゴ「こういうとこがせっかちなんですよね。映画とか30分前に入らないと気がすまないし・・・」
ヨ「だから、いちも休憩20分とかで帰ってくるんですね・・・」
ゴ「そうなんですよ」

勝手なイメージなのだが東北はA森県出身だからか、彼はとても我慢強い。文句一ついっているのを石積み場内ではきいたことがないが、今日はおいらもそろそろいなくなるからなのか、いろいろ愚痴っぽいことをいっていた。ひかえめではあったが・・・。この『賽の河原』にきた2年でいろいろかわったらしい。そして、最近は「逆ギレとまでは行かない」が、「もう開き直ってる」とのこと。

夕方。

17時半・・・今日はあとちょっとで神保町 con クーフーリンで、いろいろ聞きまくり企画ではないか・・・とドキドキしていると、メールの音。

件名:ごめんなさい!!

・・・やっぱりね。

なにやら、急な石がやってきたらしく、下手すると帰れないとかなんとか・・・。

返信する。

「了解です。なんとなくそんな気がしてましたから・・・」

その返信。

「うっ、それ友達にもよく言われるセリフです。」

続けて。

「明日はどうですか?明日(土曜日)も出社しなくちゃいけないんですが、明日なら確実です。」

返信。

「是非」


本当は土曜日に都心にでるのは避けたいんだけど、クーフーリンさんと呑むなんてこれで最初で最後だと思うし、おいらがこの石積み場に持っている「謎」を解明したいので、とりあえず約束しておいて、もし気分が乗らなかったら当日断ることにする。

すでに呑みモードになっていたおいら。しかも金曜日。定時と同時に石積み場を出て、今日が初出社らしい"むん"を呼び出す。田町。茶水の沖縄料理屋に行くことになる。康雄も誘うが、すでに家。康雄がりのにチクチクいじめられるのは、おいらには耐えられないのであきらめる。のび〜は残業でダメ。おぐりと吉野はスキー。お嬢はお茶。ってことで、マリちゃんも含めた3人で呑むことに。

茶水にいくために、総武線方面に歩いているとむんから電話。

「渋谷でもいいよ〜!」
「え???むん、渋谷でいいの?」
「うん。」
「どして?茶水の方が近いだろ?家。」
「終電読みやすいんだよね〜」
「そんなもんか・・・」

30秒前にマリちゃんに「渋谷から茶水に変更!」とメールを送ったばかりなのに、その10秒後に「茶水から渋谷にまた変更。すまん」というメールを送る羽目になる。

今になって考えると・・・終電の読みやすさだけが理由じゃなかった気がする。いや、それは大義名分な気がする。

さすがに土曜日ということでどこも混んでいた。行きつけの安居酒屋もどこもいっぱいだった。「坐・和民」(確か)とかいう
店は一組待ち。ただ、時間制限がないため、いつ空くか分からない。でも、小雨も降ってきたし・・・ととりあえず、名前を記入して待つ。待っている間にむんを派遣し。

「すぐそばにある東方見聞録のビルにある店が結構空いてる。葡萄屋て方じゃない。黒豚がメニューに多いところ。いけばわかる。」

我ながらむちゃくちゃな注文であったが、とりあえず派遣。

3分もしないうちにむんから電話。

む「とれたよ〜」
フ「おお!すばらしい!」
む「葡萄屋〜」
フ「なに〜!!まぁ、いいや。すぐはいれるなら」

葡萄屋ははいったことないのだが、名前がいまいちなので(Vinoはおいてそうが、まずいVinoだらけな気がして)あまり行きたくなかったのだが、マリちゃんが腹減りすぎて暴動おこしそうなので、とりあえず飯を与えて黙らせることにする。

さんざん文句いってた(心の中でだが)ここ葡萄屋で、スペインVinoを発見。しかも、Valdepen~asのVino。Valdepen~asといったら、「Mercadonaの宝剣」であるAlbari(5euros以下のreserva)の産地。2200円と絶対値としては高いが、店売りと考えると安い。早速注文。

「う〜ん、Valdepen~asだ〜〜!」

すでにAlbariを呑めなくなって一年以上たち、あくまで気分的なものだし、なにがどうっていわれると困るのだが、スペイン臭いVino。懐かしい味がする。葡萄屋・・・結構気に入る。

つまみは何故か「生ぬるい」ものや少量のものが多かった気がするが、Valdepen~asのおかげで満足する。

途中、お茶を終えたお嬢が参加。電話越しにぶつくさいっていたようだが、むんが強制に近い形で招集。

お嬢がきたということで、イタリアのVinoを注文。一番安い1700円のVino。が、よくみたら(白)となっていたので、あわてて「やっぱりスペインの、さっきのやつにしてください」と注文しなおす。

すると、2分後くらいにさっきの店員の子が戻ってきて

「メニューにはないんですが、先ほどのイタリアのワイン、赤もございますがいかがしますか?」

メニューにないなら黙っておけば500円高いVino売れたのに・・・たとえバイトで「別に売上げなんかかんけ〜ね〜」ということで、伝えに来たとしても、わざわざ戻ってきたことに、ちょっとした感動を覚える。

また葡萄屋きてもいいと思った。