将軍ロベルト

Masaquito2007-05-29

昨日の日記では記憶力の話をしたかっただけなのに・・・。今考えるとどうでもいい話なので、将軍ロベルトについて、もう少し詳しく書いておこう。

ロベルトはその日、プラハの博物館だか美術館に行き素敵な「脇差し」をみたらしかった。なぜチェコ人の彼がわざわざその博物館にいったのかはわからないが、もしかしたらその「脇差し」をわざわざ見に行ったのかもしれない。それが一度目だか二度目だかはしらないが・・・。

そんな素敵な脇差しをみて興奮しているところに、日本人のおいらがいたもんだから、話しかけてこないわけがない。チリ人のルーベンと盛り上がっているおいらの耳元で「ワキザシ!」ときたわけだ。

これまでいろんな外国人に突然日本語で話しかけられるということは、幾度となくあるが、「ワキザシ」といわれたことはかつて一度もない。だから、最初、おいらの聞き違いだと思ったのはしかたがないことだと思う。

お「ワキザシ?」
ロ「ワキザシ!」
お「ワキザシ・・・って・・・短い、これくらいの刀のワキザシ?」
ロ「カタナ!カタナ!」
お「・・・あってるのかよ!」

彼は「ワキザシ!」という単語を発するとき、必ずおいらの心臓やら脇腹あたりを「グワシュッ!」と効果音つきでえぐるように刺してくる。彼としては冗談なんだろうが、体がでかいし、酔っぱらっていて力の加減ができないのか、これがエラク痛い。

これはなんとかしなくては・・・と思いつつ、彼と日本の歴史について話をしていると、次は「ショウグン!」という単語を発してきた。ワキザシのあとにショウグンっていわれたら、もう「将軍」のことしかない。ここでひらめいた。

お「ロベルト・・・おいらは日本人だ。わかるか?」
ロ「日本人・・・ワキザシ・・・グワシュッ!」
お「だから、痛いって・・・ちょっと聞け!」
ロ「なんだ」
お「で、おいらは将軍なんだ。これもわかるか?」
ロ「おまえは将軍か!じゃ〜おれはなんだ?」
お「ロベルトはサムライだ。サムライ。それかブシだ、ブシ!」
ロ「おれ、サムライ!・・・ワキザシ!!」
お「将軍は偉いんだ。将軍はボスなんだ。ボス。わかるか?」
ロ「将軍の部下はなんていうんだ?」
お「シンカだ・・・臣下・・・。おまえはおいらの臣下だ。」
ロ「シンカはワキザシもってるのか?」
お「もってる。」
ロ「おれ、シンカ!・・・ワキザシ・・・グワシュッ!」
お「だから!おれは将軍。オマエのボスだ。シンカはボスを刺さないの!」
ロ「おれ、サムライ!」
お「わかったなら、ほら、シンカの礼を!土下座だ、土下座!」
ロ「わかった・・・こうか?」
お「それはヨーロッパでのやり方だ。日本の礼は・・・ほら、こう膝と膝をあわせてだな・・・」
ロ「こうか!」
お「そうだ、それが土下座だ。そして、もう刺すな・・・将軍は偉いんだから」
ロ「おう」

彼は自分が部下になっているということを理解しているのにもかかわらず、ちゃんと言うことを聞くことに少々びっくりしたが、とりあえずこれで刺されることはなくなったと安心していたのだが、おいらがチリ人との会話の方にうつると、寂しいのか、やはり「ワキザシ!」といって、背中あたりを刺してくる。そのたびに、「おいらは将軍だ!」といって、臣下の礼をとらせなくてはいけなかった。

そして、突然の下剋上

ロ「おれ、ショウグン!おまえ・・・シンカ!」

ええええ〜〜〜!!!!下剋上早すぎ・・・。

調子にのった彼は、床を指さし・・・「おれ、ショウグン!」・・・と目で土下座するようにいってくる。自業自得ってやつなのか?

お「わかりやした。わかりやした。」

膝をついて、ヨーロッパ方式の臣下の礼でごまかす。

ロ「違う。日本のだ!」

お、覚えてたのね・・・。

店内で土下座する。なんたる屈辱。これは何とかしなくては・・・。またひらめく。

お「わかった。ロベルト・・・おまえがショウグンだ。おいらは臣下でいい」
ロ「おれ、ショウグン!!」
お「ショウグンはな、えらいから戦わないんだ。ボスは見てるだけ。戦うのは臣下だけなんだ。わかるか?」
ロ「ショウグン、エライ!おれ、ショウグン!」
お「OK。でな、ショウグンはな、ワキザシはもってないんだ!」
ロ「ショウグン・・・・ワキザシもってない!!???」
お「(なんて悲しそうな目をしやがるんだ・・・)」
お「そうだ。ショウグンはワキザシをもってないんだ(嘘)。」
ロ「カタナはもってるのか?」
お「もちろん。カタナはもってる。が、戦わないんだ。」
ロ「ワキザシは?」
お「ショウグンはワキザシをもつこともあるが、それは切腹するときだけだ(嘘)」
ロ「セップク?」
お「あ〜・・・ハラキリだ!ハラキリ!グローバルだからわかるだろ?」
ロ「ハラキリ!!!!」
お「そうだ。ハラキリのやり方知ってるか?」
ロ「映画でみたから知ってる。こうだろ?グワシュッ!グワシュッ!」
お「そうだ!まさにそれだ!腹をきってから、心臓だ。心臓!」
ロ「ハラキリ!グワシュッ!」
お「よし。それを練習しておきなさい。」

勝った・・・・。

話は続く。

ロ「ゲイシャは日本じゃいくらだ?」
お「コロナでか?ユーロでか?」
ロ「ユーロでいい」
お「5000ユーロくらいだ。(嘘)」
ロ「5000ユーロ!!娼婦がなんでそんなに高いんだ!!」
お「特別な娼婦だからだ。高級なんだ」
ロ「今も日本にはいるのか?」
お「いるけど、特別な場所だけだ。」
ロ「ショウグンはゲイシャをもってるのか?」
お「当然もってるさ。」
ロ「そうか。おれショウグン!」

もう途中から口からデマカセばかりいっていた。酒呑みながら話せない英語で会話するのには無理があったのだ。具体的に説明するには、おいらの英語力は全くもって足りなかったし、さらに面倒くさいときなんかは、完全にスペイン語で説明していた。スペイン語で話をされて、ロベルトはチンプンカンプンなはずなのだが、別になにもいってこない。ただただ黙ってうなずくか、おいらが話す日本語の単語を拾って、そこから話をつなげていた。

これでロベルトが、酔っぱらっておらず、ちゃんと話ができる状態だったら、いくらでもがんばろうと思うが、隙あらば「ワキザシ!」しかいわんので、おいらとしては、ルーベンたちの方に戻りたかった。しかし、最初の時点で、マジメに日本の歴史について応えってしまったため、ロベルトにエラク興味をもたれてしまったのだ。

ロ「オレ、ザ&$#!!」
お「???なんだって?ザ???」
ロ「オレ、ザ&$#!!」
お「それ、知らない。日本語?」
ロ「おれ、みた・・・映画!」
お「映画?日本の映画?」
ロ「そうだ。」
お「どんな映画?」
ロ「目がみえないんだ。そして、杖をもってて・・・」
お「あ〜〜!!ザトウイチね。タケシキタノのやつ」
ロ「そう!それだ!!!!!ザトウイチ!キタノタケシ!」
お「あれ、好きなんだ?」
ロ「すごい好きだ!!」
お「あれは「イアイ」っていうんだ。居合い!」
ロ「イアイ・・・」
お「そうだ。こう構えてな・・・敵が来るだろ?そしたら・・・こうだ!これで敵はもう死んでるんだ」
ロ「それだ!それ!なんていうんだ?もう一度」
お「イアイだ。イアイ。」
ロ「イアイ・・・グワシュッ!!!」
お「だから、痛いって!!!そこで一人で練習してなさい!」
ロ「イアイ・・・イアイ・・・グワッシュ!」
お「あ〜〜〜!!ほかのお客にやるな!」
お「すいませんすいません・・・」(ほかの客に)
お「ショウグン!黙って呑んでなさい!ショウグンの酒の飲み方はこうだ!」
お「こう、胸を張ってだな〜、肘を出して・・・そう!で、一気に呑みなさい」
ロ「おれ、ショウグン!ザトウイチ!・・・なんだっけ?」
お「イアイだ、イアイ」
ロ「違う、オマエの名前」
お「もう何度もいってるだろ〜10回目くらいじゃないか?マサキだ、マサキ!」
ロ「マサキ、シンカ」
お「そうそう。おれ、シンカ。ロベルト、ショウグン。わかったから静かに呑もうね」
ロ「ワキザシ・・・」


呑んでいた店は3時くらいまでやっている店だったのだが、ロベルトがおいらを「パンクの店」に連れて行くといって聞かない。その店はタクシーじゃないといけないという。場所はどの辺だと聞いても、「あの丘の方だ」としか説明してくれず、要領を得ない。誕生日前日のその日は日曜日だったたのもあって、両替をするのを忘れていて、金はほとんどなかった。それを理由に断ろうとしたのだが・・・

ロ「おれ、ショウグン!金は全部出す!」
お「えええ〜〜〜!」

ラッキーな申し出ではあったが、タクシーというのがいただけなかった。その店までいって、そこで呑むまではいい。だが、帰りはどうするのだ。チェコにきてからタクシーには乗っていないので相場はわからないが、タクシー代が残るほどすでに有り金はない。

ただ、興味深い話ではあった。パンクには全く興味はなかったが、いったいチェコ人がどんな店にいっているのか、またどんな雰囲気なのか・・・というのは知りたかった。まぁ、地図もあるし、最悪歩いて帰ってきてもいい。とりあえず、ついていってみることにした。

ルーベンとアメリカ人カップルにお礼と謝罪をし、12時ちょっとすぎ・・・ロベルトに連れられてタクシーに乗り込む。行き先を告げるロベルトの言葉を聞き逃さないようにしていたのだが、なんていっているのか全くわからなかった・・・。

10分も走らないうちにタクシーは泊まった。丘といっていただけあって、坂道をずっと登っていったところだった。すでに、歩いて帰れる距離じゃないような気もしたが、まぁ、なんとかなるだろう・・・とロベルトについていく。

お「ロベルト・・・どこよ・・・その店・・・」
ロ「・・・・」
お「な〜な〜ロベルト・・・」
ロ「まずここだ!入れ」
お「って、ここ普通のアパート(マンション?)やん!」
ロ「そうだ」
お「そうだって・・・・」
ロ「いいから入れ」
お「・・・って、ここロベルトんち??」
ロ「そうだ。」
お「え??何しにきたの・・・帰るのかよっ!」

なにやら部屋の奥でごそごそやっているロベルト・・・立ち上がると手には大量の札が・・・

ロ「5000コロナだ!」
お「5000コロナ!!!???200euros近いじゃんか!」
ロ「これだけあれば大丈夫だろ」
お「・・・多すぎだろ・・・」
ロ「パパ〜!」
お「!!!!」

突然、ドアを開けて電気をつけるロベルト。すると、そこには大型犬と一緒に寝ていたパジャマ姿のロベルトのパパンが・・・。おいらもびっくりしたが、ロベルトのパパンも寝ぼけ頭ながら、日本人のおいらを見てびっくりしていた。

お「おいおい、ロベルト・・・パパン寝てるだろ〜早くいこうよ」
ロ「・・・おまえの名前なんだっけ?」
お「だから〜マサキだって・・・」
ロ「パパン、マサキだ。日本人だ」
パ「こんばんわ・・・・」
お「こ、こんばんわ・・・」
お「早くいこうよ〜」
ロ「まて・・・ママ〜!!」
お「あっ〜〜!!!!もういい!いくぞ!」
ロ「わかったって。」
お「ママ〜でかけてくる」

ロベルトはおいらを両親に紹介しようと思ったみたいだが、時間帯が悪すぎるだろ。

お「で・・・そのパンクの店は?」
ロ「まぁ、待て・・・」
お「待てっていわれてもね〜」
ロ「腹減ってるか?」
お「減ってない」
ロ「そうか・・・」
お「腹減ってるなら、ロベルトはなんか食べれば?」
ロ「オレもいい」
お「で?」
ロ「まずここだ・・・」
お「ここ?ここって、カジノじゃないの?」
ロ「そうだ」
お「良く行くの?」
ロ「初めてだ」
お「え〜〜〜!!!」

だんだん訳がわからなくなってきた。スロットが沢山並ぶそのカジノで、ウォッカを3杯かっくらう。小さい店で客はうちら以外誰もいない。

お「で、うちら何してるの?」
ロ「そろそろ行くか・・・」
お「(何なんだ?)」

外にでると、3人組の男が通りかかる。

ロ「ヘイ!」
お「え?友達?」
ロ「%#$#$%#$&\$%」(チェコ語で不明)

なんか、嫌な空気が流れる。向こうはニヤニヤ笑っている。右手で3人のうちの一人ポンッと押す。相変わらずニヤニヤしている3人。そして、またチェコ語でなにやら意味不明の会話をしたと思ったら、「オレ、ショウグン!」と今度ははっきりと意味のわかる台詞を発した。そして、「いくぞ・・・」といって、おいらのところに戻ってきた。

お「友達?」
ロ「いや、知らない」
お「ええええええ!!!」

完全に理解不能

ロ「よし、タクシーだ」
お「ええええええ!!まだタクシーに乗るの!?」
ロ「すぐそこだ」
お「だったら歩こうよ」
ロ「歩けない」
お「じゃ〜すぐそこじゃないやんか〜!」

15分ぐらいたって、ようやくタクシーが捕まる。次の目的地こそ聞き逃さないようにしようとしたが・・・無理だった。そもそも、プラハの地名自体一つもしらないので、どの単語が地名かわかるはずもなかった。

タクシーはさらに丘の奥へと向かっていった。かなりクネクネした道で、人通りは全くと言っていいほどなかった。そして、降り立った場所は、見事に人気のない場所であった。こんな場所に店なんてあるのか・・・。

タクシーを降りた場所から5分も歩くと、一軒だけだが電気のついた店が見えてきた。「よ、よかった・・・あそこにいくのか・・・」。暗闇に目が慣れてくると、いまうちらがいる場所が、どうも学校らしいということまではわかってきた。大学だか高校だかわからないが、校舎っぽい建物が並んでいた。

その電気のついた店に入る。中はとても明るかった。客は全員大学生っぽい若者で、楽しげに談笑している。カウンターに座りビールを注文。払ってもらってばかりだったので、ここはおいらが払うことにする。

ビールが到着する前に、すぐ側でギターを弾いていたおっちゃんのところにつれていかれる。店の人間らしかった。チェコ語で何か注文しているが、おいらにはさっぱりわからない。どうも、おいらの知っている曲を弾かせようとしているらしかった。

ロ「この曲は知ってるか?」
お「う〜ん、知らない・・・」
ロ「この曲は?」
お「知らない・・・」

困り果てる弾き語りのおっちゃん。「知ってる」というまで、おわらなさそうなので、次の曲こそ「知ってる」と言おうと思っていたら、本当に知っている曲が流れた。「禁じられた遊び」。知らない人の方が少ないだろう(笑)

カウンターに戻り、ビールを一口呑み考える。

「うっかりしていたが、うちらの目的地は「パンクの店」であったはず。なのに、ここは明らかにパンクの店ではない。ってことは・・・・まだ先があるってことなのか・・・・」

ロ「いくぞ!」
お「ええええ!!ちょっとまってよ!ビール一口しか呑んでないじゃんか〜!!」
ロ「こっちだ・・・」
お「あほ〜!!なけなしの金で払ったのに〜〜!!」
ロ「この店は最悪だ」
お「なにがだ〜!!」

結局、注文したビールはほとんど呑めないまま、店をでることに。店から3分ほど歩き、格子扉の前に連れて行かれる。

ロ「ファック!ファックファックファック!!!!」

どうも、店は閉まっていたらしい。

お「今日は日曜日だからね〜」
ロ「日曜日か・・・・」
お「で、どうするのよ?」
ロ「こっちだ・・・」
お「そっちいくと何があるのよ?」
ロ「わからない」
お「わからないって・・・・」

どこに向かっているのかわからないまま、とりあえず歩くと、開けた広場にでた。広場の端っこまで移動すると、かなり向こうに綺麗な夜景の町並みが見えた。その夜景に感動しながらも、歩いて帰れる距離じゃないことを確信した。

お「で?夜景は綺麗だけど、何もないじゃん」

振り返ると、バス停のベンチで横になっているロベルトの姿が。

お「お〜い、お〜い!寝るなよ〜!ここはどこだよ!」
ロ「・・・」

起きる気配なし。

あたりを見回すと、すぐ目の前に大きな建物が見えた。形からして、なんかのスタジアムらしい。スパルタ(プラハのサッカーチーム)のサッカー場か?

街灯の下で地図を広げる。

「いったいここはどこなんだ・・・」

しかし、スタジアムらしきものは地図のどこにもなかった。

「ま、まさか地図外まできてしまったとは・・・どう帰ればいいんだ?」

車通りは見事になかった。ましてやタクシーなぞ望むべくもない。サッカースタジアムなんて、試合の日以外は閑散としているのは当然だ。しかも、日曜日の夜中の2時過ぎだ。ロベルトをたたき起こして、場所を聞くか・・・いや、待て・・・バス停があるということは地図が貼ってある可能性がある・・・まずはそれで確認しよう。

ロベルトの寝ているバス停に近づくと、案の定地図が貼ってあった。しかも、おいらの地図よりも郊外まででている地図だ。

「スタジアム・・・スタジアム・・・こ、これか?そうだ!スタジアムの前の広場がここだ・・・で、ここは学校だ!」

とりあえず、自分のいる場所はわかった。わかって愕然とした。どう考えても、おいらの宿まで歩いて2時間以上はかかる。タクシーはない。金もない。歩くしかない。

お「ロベルト!おいらは帰るからな〜!」
ロ「ポチケ〜イ!」
お「ポチケイ?」
お「帰るからな〜。そこで寝ていくんだな〜」
ロ「ポチケ〜イ!」

ポチケイ・・・そのシチュエーションから考えるとどうも「待ってくれ」という意味だと思われる。

お「ネ!ポチケイ!」(ネはNoの意。つまり「待たない」といいたい)

チェコ語でいったのがよかったのか、むっくりと起き上がるロベルト

ロ「タクシー〜!」
お「あほ!!タクシーなんぞおるか!車だって走ってないだろうが!」
ロ「あるけな〜い」
お「じゃ〜寝てろ〜!」
ロ「ポチケ〜イ!」
お「ネ!ポチケイ!」

ロベルトはうしろから千鳥足でフラフラとついてくるのだが、ふと振り向くと、芝生に倒れていたりする。

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だから、遅々として進まない。これじゃ〜3時間たっても4時間たっても家に到着しない。呑んでいて遅くなるのはいいが、この状態はとても不毛だ。

お「ロベルト〜!セントロ(中心街)いこうよ〜!」
ロ「セントロ〜!」

これまでの会話を見ていると、いかにもおいらが英語で話しているようだが、しつこいようだが、おいらは8割スペイン語で話している。ちゃんと伝えたいときだけ英単語を使っていた。ここでもCentroはスペイン語でいったのだが、なぜか通じた。

お「そう。セントロ。セントロにいって呑もう!」
ロ「タクシー!」
お「だから、タクシーは走ってないって!!もう、おいらは行くからね〜!じゃね〜!」

もう無視してさっさと帰ることに決めた。結構暖かい夜だったし、ロベルトは巨体だから風邪ひいて肺炎になることもないだろう。それよりもおいらはさっさと帰ってPivo(ビール)呑んで寝たかった。

ロベルトを200mほど引き離したところで、ふとひらめくことがあって、再びロベルトの場所に戻る。

お「ロベルト・・・あんさん、タクシーの電話番号もってないの?」
ロ「あっ・・・ちょっとまて・・・」
お「(お、もしや持ってるのか!?)」
ロ「あった!かける」

よしっ!これでとりあえずCentroまで戻れる!Centroまで戻ってしまえば、いつでも歩いて帰れる。それに、さっき呑み損ねたPivoが呑める!!

「10分後にここにくる」とロベルトはいったが、タクシーは5分と経たずにやってきた。

お「ロベルト・・・とりあえず、セントロにいこうよ。頼むよ。」
ロ「わかった」

調子よく発進したタクシーが暗い道をどんどん進むのに反比例して、おいらの心はどんどん明るくなっていった。助かった・・・。

ロ「ここだ・・・降りろ」
お「え?ここ?」

降り立った場所は、なんか見覚えのある場所だったが、明らかにセントロではなかった。あたりを見回すと、先ほど入ったカジノの店があった。

お「ロベルト〜〜!ここ、あんさんの家やん!」
ロ「こっちだ・・・」
お「どこいくんだよ〜」

まぁ、いい。完全にとはいえないが、とりあえず、丘は降りてきた。ここなら地図にもでているし、1時間分くらいの短縮にはなったはずだ。

黙ってロベルトについていくと、またもや鉄格子の扉がある店につれていかれた。ブザーを押すと、鍵があいた。中は普通のBarだった。ビリヤードやダーツが置かれている。カウンターには女性が二人。客はダーツをしている二人の若者以外は、完全に酔っぱらいのオヤジたちであった。

とりあえず、カウンターにつきワインを注文。チェコのワインだ。今度の店はロベルトも気に入ったのか、すでに何度かきたことのある店なのか、最後までいることができた。彼の好きな曲がいっぱい入っているジュークボックスがあったからかもしれない。

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おいらはワインを楽しみつつ、なんとも魅力的な二人の女性店員の仕事を観察していた。ブロンドの子の方はスロヴァキア人で英語を話す。赤髪のちょっとパンクな感じの子はチェコ人で、英語は話せなかった。

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ロベルトはジュークボックスに夢中になっていたため、つかの間の静けさを楽しむ。客は酔っぱらいばかりだったのと、日本人がきたのは初めてとのことで、しばらくその女性二人と会話することができた。おいらは、もってきた会話本を手に、ここぞとばかりにチェコ語の練習をさせてもらう。「おいらは日本人です」、「おいらの名前は・・・」、「おいらの出身は・・・」、「おいらは旅人です」、「年は・・・」、「○○と××を旅してきました」がちゃんと通じるか確認。そのあと、相手の名前や出身地などを聞く練習をする。

たまに、ロベルトが戻ってきてウォッカを注文。彼女たちの分もだ。結局この店でウオッカを6杯も呑むはめになった。おいらはワインがいいっていってるのに・・・。それにしても、さっきまでは「もう歩けない〜!」と今にも寝そうだったのに、いまはジュークボックスに曲をいれては、「この曲・・・かっこいいだろ!!!」と、一曲かかるたびにおいらに聞いてくるくらい元気になっていた。チェコ人にとって、ウオッカというのはドーピングみたいなもんなんだろうか?

閉店となる朝の6時くらいまでその店で過ごしたあと、来た道を引き返して、カジノのすぐよこにある、デリみたいな店にはいることになった。さすがに腹も減ってきたので、快く賛同する。

すでに完全に無一文なので、料理はロベルトに任せたら、こんな感じで盛りつけられた。早朝のピクルスはなかなか刺激的だった。スペインでもよくかじっていたが、小ぶりなタイプで、ここまで大きくなかった。

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鶏肉はケチャップがたっぷりで、早朝に食べる食事としては重かった。ポテトも長い間、油の海を潜っていたのか・・・こちらも重かった。そんなことはお構いなしにペロリとたいらげるロベルト。おいらはピクルスだけ全部食べて、残った少しの肉とポテトはロベルトにあげた。

今日は酒量としてはだいぶ呑んでいたはずだった。ウォッカだけでも最初の店から数えて15杯近く呑んでいたし、最後の店でワインをグラスで5杯は頼んだ。Pivoも500mlを6杯(うち1杯は一口だけ)呑んでいる。だのに・・・まったく酔っぱらっていなかった。呑んでは歩き、呑んでは歩き・・・を繰り返していたからだろうか?それとも、言葉の通じない土地だから緊張していたのだろうか?理由はわからないが、かなり頭はしっかりしていた。ただ、さすがに疲れてきてはいた。

食事を終えたころには、太陽はすでに昇っていて、通りには出勤する人たちがチラホラ出てき始めていた。さすがにもう帰るだろう・・・と思っていたが、なぜかなかなか帰ろうとはしないロベルト。

彼と一緒にいたのはその晩だけだったが、おそらくなのだが・・・ロベルトは友達が少ない・・・または、いないんじゃないか・・・って気がしてきた。「彼女は3人いる」といっていたが、3人もいて、なぜ日曜の夜においらと呑んでいるのか・・・。もし友達がいたとしても、酔っぱらった時のあの感じからすると、一緒に呑んでくれる仲間ではなさそう。あるいは、パンクの店には沢山いるのかもしれないが・・・。

勝手に不憫に思い、もう少しつきあうことにしたのだが・・・その甘さが間違いであった。

すぐそばに路面電車が走る人通りの多い通りで、しつこくチャンバラをせがまれる。もちろん竹刀なんぞないから、構える格好だけして、斬り合うのだ。おいらも当然しらないが、彼はおいらよりもさらに刀の怖さを知らないから、構えたとたんすぐに斬りつけてくる。さらには刀には「鍔」があるということもお構いなし。かなり楽しそうにチャンバラしているのだが、斬り合うたびにおいらの肋骨はくだけていった。「あ、今は自分が切られた・・・」ってことはわかるみたいで「今のはオレが死んだな・・・」と素直に認めるのだが、斬り合いは何度も何度も続いた。

周りの通勤客は「なんだこいつら・・・」と訝しげな目でうちらを見つめるが、途中からどうでもよくなってきていた。間違った使い方だが「旅の恥はかき捨て」っていうし・・・。

家まで送っていくよ・・・というロベルトの言葉を信じて、路面電車に無賃乗車してはなぜか途中で降ろされてを繰り返し、気がつくと最初の場所に戻ってきていたり・・・となかなか家に戻ることができなかった。気づくと時計は11時近くになっていた。

ロ「飯を食べよう!」
お「さっき食べたやん。腹減ってないよ」
ロ「どっかいこう」
お「寝ようよ・・・疲れたよ・・・」

おそらくこのままじゃ〜ダラダラとつきあい続けることになりそうだった。明日の夜は、昨夜約束した二人組と呑むことになっていたし、その前にまだ市内散策すべき場所も残っていた。いまから4時間寝るとして・・・もう時間がない。

お「じゃ〜おいらは帰るね〜もう寝るよ!」

そういうだけいって、ロベルトの返事は待たずに、やってきた路面電車に乗り込む。

ロ「ポチケ〜イ!」
お「ネ!!ポチケイ!じゃ〜ね〜」

それがロベルトとの最後の別れだった。

適当な路面電車に乗ってしまったので、まったく反対方向に向かってしまったおいら。すぐさま降りて、また違う路面電車に乗ったが、先ほどロベルトと別れた場所にまた来てしまう。ロベルトの姿はもうなかった。

疲れていて地図で確認するのも億劫だったので、その次にやってきた路面電車にのったが、それも違う方向へいってしまう。それを何度か繰り返しているうちに、無賃乗車でちょっとビクビクしていたのと、あきらかに「こりゃ時間の無駄だ・・・」と気づき、きちんと調べ、地下鉄の駅まで歩き、無事宿に到着。

冷蔵庫からキンキンに冷えたPivo出してきて、それを呑みつつ、その日を振り返る。

ロベルトとはいったい何だったんだろう?彼は何がしたかったんだろう?おいらとは表面的な部分では会話はできているが、細かいところはまったくといっていいほど意思の疎通ができていなかったはず。あれで楽しかったのだろうか?前半はともかく、後半はおいらも楽しかった。それに、少なくとも彼が日本人を捕まえてくれたおかげで、明日の誕生日は一人ではなくなったわけだから、感謝しないといけない。だけど、その代償が肋骨か・・・脇差しか・・・将軍か・・・次にあったときにおいらのこと覚えてるのだろうか?そういえば、最後までおいらの名前覚えてもらえなかったな・・・

まぁ、いいや・・・もう寝よ。


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普通の今日の日記

掃除をして一日過ごす。そろそろ今の生活にも飽きてきたので、本格的に動くことにしようと心に誓う。

映画を見る。ってことで、感想。


【Reservoir Dogs】(レザボア・ドッグス

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【点数】4.5点(5点満点)

【制作年】1991年 【制作国】アメリ
【監督】クエンティン・タランティーノ 【公式サイト】なし
【キャスト】ハーヴェイ・カイテルティム・ロスマイケル・マドセンクリストファー・ペンスティーヴ・ブシェーミ


【感想】
最初に書いておくと、おいらはゲイリー・オールドマンと同じくらい、スティーブ・ブシェミが好きだ。大好きだ。次生まれ変わるなら、あんな感じで生まれてもいいと思うくらい。かっこよすぎる・・・。あの存在感はなんなのだ・・・。

さて、レザボア・ドッグス。ご存じ、タランティーノの監督デビュー作。今回で見るのは3度目。高校生2年生の時、大学生の時、そして今回。二度目からだいぶ時間は経っているが、その面白さは全く色あせていなかった。すばらしすぎる。

あらすじは、とある犯罪グループが宝石強盗を計画する。そのメンバーはジョーと呼ばれるボスに当たる人物が集めた強盗のプロフェッショナルたち。彼らはお互いのことは知らないが、ジョーを信頼して、その宝石強盗に参加することになった。彼らにはそれぞれあだ名がつけられる。ホワイト(ハーヴェイ・カイテル)、ブロンド(マイケル・マドンセン)、ブルー(エディー・バンカー)、ブラウン(クエンティン・タランティーノ)、オレンジ(ティム・ロス)・・・そして、ピンク(スティーブ・ブシェミ

計画は綿密に練られて、成功間違いなし・・・であったはずなのだが、失敗する。情報が漏れていたのだ。メンバーの中に裏切り者がいる・・・そいつは誰なんだ!

てな感じ。

スティーブ・ブシェミが「ピンク」ってところで、もうおいらは大喜び。それに関してのやりとりも劇中あるが・・・いや〜かっこいいわ。

ブシェミのほかにも、この映画のキャストはとても豪華だ。ブルー役のエディーバンカーは知らないのだが、残りはほかにも沢山出演作のある有名所だ。

タランティーノの映画は劇中のどうでもいい会話がとても凝っているので好きだ。サントラなんかでも、わざわざその会話を収録しているくらいだから、なんかしらのこだわりがあるんだろう。パルプ・フィクションもそうだし・・・。今回の映画だったら、冒頭のマドンナの「Like a Virgin」の話だけで10分は続く。

最初が面白くても、最後で失敗してがっかりさせられる映画はよくあるが、この映画は最後がとてもすばらしい。ただ、こういうのって男が興奮する世界なんだろうな〜と思う。仁侠とか仁義の世界だし。深作欣二を尊敬してるだけある。女性でもこの映画好きな人は沢山いそうだけど、「面白くない」という人も多そうだ。

あまり書くと面白さが半減してしまうので詳しくは書かないが、ストーリー、テンポ、ラスト、キャスト・・・すべてにおいて一押しの映画。見てない人は是非とも見て欲しい。

ちなみに、個人的には「パルプ・フィクション」よりもこの映画の方が好き。「フォールームス」はあまり人気がないみたいだけど、おいらは好きなんだけどな〜。サントラもすごいいいし。この映画みてから、フォールームスのティム・ロスをみたら、「え?」って思うかも。