仕事いっぱい来ちゃうよ?

バベルの塔で働いているほかの人たちは8時半から石を積んでいるのだが、おいらは契約で9時からとなっている。別に「9時にしろ!」といったわけではなく、最初に話をもらった時点で9時だった。

石積み初日は、ラッシュを恐れてかなり早めに家をでたのだが、電車が止まって結局ギリギリだったため、2日目もだいぶ早めにでた。具体的に書くと、7時半くらいに家をでて、7時33分の電車に乗る。

あまりに人が多いので、その週はずっとその電車を使っていたのだが、それだと電車が止まらず順調にいってしまうと約30分前にはバビロニアについてしまう。そこからバベルの塔まで5、6分ほどなので、タバコを1本吸ってもだいぶ時間が余ってしまい、結構暇をもてあますことになる。別に早く自分の席についてもいいのだが、なんとなくもったいないので、見学がてらウロウロする毎日が続いていた。

1週間たち具合もわかってきたので、今日はあえて二本ずらして電車に乗ってみた(一本前のヤツは33分の電車が座れなさそうな時に何度か使ったので、すでに検証済み)のだが・・・・。

通勤時間のバビロニアはもうあり得ないくらい人が多いと思っていたのだが、実は思っていたほどの量ではなく(スペイン人が見たら腰を抜かしそうだが)、「案ずるより・・・」じゃないか・・・と思っていたのだが、いやいや、甘かった。

すげ〜よ、バビロニア。異常じゃ、異常。あんなところ人間がいくところじゃないって!!

スーパーサイヤ人で打ち止めだと思っていたら、スーパーサイヤ人2がでてきて「なんじゃこりゃ〜!」と思ったときの気分に似ている。もう戦闘力が多すぎて、スカウターは壊れるだけ・・・って状態。って、なんかチープなたとえだ。

理由はいたって単純。9時開始の石積み場が多いのだろう。今回は階段を使わず、エスカレータをまったり使ったりなどして、9時に合わせてゆっくり通石積み場したので、見事にラッシュにぶつかった。

コ、コレが本物の「バビロニアのラッシュ」なのか・・・・。

経験値の少ないおいらは、かなりのダメージであった。

しかも、バベルの塔内のエレベータもラッシュ。40人くらいが同じエレベータをまっていた。あまりの人数に階段使ってやろうと思ったが、さすがに何十階分も階段登るのはえぐすぎる。

結果、10分早く起きることになろうとも、30分前についてしまおうとも、昨日までの電車に乗ることにした。コンビニでコーヒー買ったり(って、ここもかなり混んでるのだが)、喫煙所でタバコ吸ったり、散歩したり・・・そっちの方があの人混みに埋もれるよりもよっぽどマシだ。

かなり昔から「時差通勤」みたいな標語を掲げたポスターなんかが電車や駅構内に貼られていたが、今になってようやくわかった。「5分程度遅らせて何がかわるんじゃ〜!」って、当時は思っていたが、その5分の重さに気づいたさ。

スペインとは言わないから、人がこんなに多くないところに移りすみたいよ。適度に都会(ミニシアターや美術館がやってくるくらいの都会)で。やっぱ、福岡だ、福岡。



日雇い石積み人生でおいらが覚えた石積み方法がある。

まず、最初の数ヶ月(だいたい2〜3ヶ月くらい)はがむしゃらに働く。ものすごい集中力とそれに伴う手際でだ。上司が「一日くらい」と思っている分量だったら「3時間」、「半日くらい」だったら「1時間」、「1時間」だったら「10分」といった具合で、石を積んでいく。早くやっても、ミスがあったらダメなので、相当神経使うのだが、これを続けていると「石積みが早いやつ」というイメージを持ってもらえる。

匂い的に「そろそろそう思われてきたかな・・・」と思ったらペースダウンさせる。合間合間にネットで遊んだり、自分の趣味(?)に費やしたり・・・いうたら、サボリ始めるのだ。

最初からこれをやると「石積みができないやつ」とか「石積みが遅いやつ」という烙印を押され、なにか「交渉」したりするときに、何かと損をする。最悪、クビになったりもするだろう。

が、最初に良いイメージを植え付けておくと、「1日分」をきっかり「1日」で終わらせても当然文句はいわれないし、やる気がなかったり、寝不足だったり、個人的な石積みがあったりなどして「一日分」を「一日半」とか「二日」かかっても、それまでの早さがモノをいい、「まぁ、ヤツでも時間がかかるのだから、そこそこ大変な石なのだろう・・・」と勝手にあっちが思ってくれるのだ。

日雇い石積み職人の場合、石積みができても、出世するわけでもないし、給料があがるわけでもない(ただ、一年くらい経ったあとの時給あげ交渉の時に大幅にあげられるが)のだが、経験値の少ないところを補ってくれるし、ハッタリにもなるし、回り回ってどっかで「信用」ができたり・・・と人間関係的にも何かとメリットが大きい。まぁ、当然といえば、当然か・・・。

当然、今回の石積み場でも同じように石を積んでいる。短期なので、効果がでるころにはいなくなってるという状況にもなりそうだが、すでに癖になってるのでいたしかたない。

今日は帰り際、小さいのと中くらいの臨時の石を投げられた。退社まで1時間ちょっとしかないという時点で。上司も渡すとき「今日中は絶対に無理だから、始めるのは明日でもいいよ・・・」と言われたのだが、「これはチャンス!」と、ものすごい速度で石を積む。高速過ぎて手が見えないくらいの早さで。「達磨落とし」をやるときくらいの集中力で。

半日かけてもいい石であったが、1時間で終わらせ「終わりました〜」というと、予定通りびっくりする上司。「うしっ!作戦成功・・・」とほくそ笑む。

すると・・・

「あんまり早く仕事やっちゃうと、いっぱい仕事きちゃうよ〜。相手も調子乗るし・・・」

という返事が返ってきた。

瞬時に理解した。

これまで小さな石積み場でしか働いていないので、挟んでも「あいだ2人」くらいな状況だったのだが、バベルの塔は間に「5人くらい」挟む。しかも、最近になってようやく理解したのだが、身内の会社であっても「外部の石積み場」という認識で、互いに牽制しあっているのだ。理解した今でも全くもって理解不能なのだが、外部には「遠外部」(他人)と「中外部」(遠い親戚くらい?)と「近外部」(3等親くらい?)みたいのがあって、一番近い身内の別会社(もとは同じ一つだが、分業して別会社となっている)である「小外部」でも、もちろん身内なので一緒に一つの業務をやっているわけだが、場合によっては「良く知ってるおじさん」・・・くらいな感じで扱っているような気がしてならない。電話での会話を良く盗み聞きしては、研究しているのだが、「ホント身内会社なの?」と思うような牽制と愚痴の言い方だ。外資ってところも関係してるのだろうか?

結局、縮図の状態での「おいら」と「中間」と「上司」のような三つ巴の関係が、拡大してくたびに全く同じような形でその関係性が無限に連なっているのであろう。3つの点がある三角が3つ集まって三角を作り、そのまとまりがまた三角を作る・・・。おいらが策を弄しているように、うちの部署も策を弄し、うちの石積み場も策を弄し、身内会社を集めた石積み場(企業)全体も・・・うぐむ〜。

結局、最後にやった石は、相手を調子づかせたり、石が大量に増えたり、間を通さないで直接石を投げてくる要因となるという危惧から調整することとなった。すでに終わっているが、明日の午後くらいにできたことにするらしい。

これまでの石積み場だと、規模が小さいから、自転車操業的な感じで、調整する余裕なぞなく、いつも締め切りでひ〜ひ〜いってたけど、やっぱり大きい石積み場って違うな〜。狸だ。狸。化かし合いだ。化かし合い。だから、ヒリついた感じがせず、パックスロマーナなんだな。

大人って・・・賢いけど、やっぱりずるい。

人間ってホント面白すぎ・・・と再確認しつつも、おいらはやっぱり自営業向きな気がした。

石積み初めて一週間・・・・そろそろ旅にでますかね。合掌。


追記
昼飯は、ドトールドトール、サブウェイ・・・の割合で毎日同じような飯喰ってる。タバコが吸えるのと、長いができて本が読みやすいという理由から。金がかからなくていいが、一週間ですでに飽きてきたが、他に候補もなし。どこも混んでるし、バビロニアのオフィス街という環境からか、どの店も席と席の間に余裕がない。友達(同僚)同士ならいいが、対他人との隙間としては狭すぎる気がしてならない。落ち着かない。そうじゃない店も沢山あるんだろうけど、これまたバビロニアの特徴か店がありすぎて目眩がする。本屋とか映画館とかスペインBarとかはいくら多くても目眩はしないのだが・・・なんでだろう。