ヌエボ ゴルフォ

朝。中央線で何かしら起こったらしく(火災らしい)、山手線だけでなく、他の電車もえらいことに。毎日、30分前にバベル下について一服するところが、30分遅刻。寝坊とかじゃないのに遅刻するのって、すごいイヤ。遅刻するくらいだったら、石積み休む!と思ってしまうのはおいらだけか?

ようやく愛着がわいてきたというのに、車を売られた。ゴルフォ号。売られたのは、昨日、今日の話ではなく、約一ヶ月前くらい。ある晴れた昼下がり、市場へ続く路を・・・。

具体的なことはよくわからないが、泪橋の加藤さんの知り合いで、マニュアルじゃなくてはだめという人がいたらしく、なぜかおいらの車に白羽の矢が。まぁ、そのゴルフォ号も加藤さんがもってきたんだけど・・・。

まだ売れるかどうかわからないらしい。売れなかったら、ドナドナは売られることなく、またおいらの元に戻ってくるという話であったが、その口調が子供をだます時の大人のような感じだったので、まったく信じてなかった。

おいらもマニュアルじゃなくちゃイヤだ〜!とダダをこねて、ようやく今のゴルフォ号になったというのに・・・帰国してからしばらく乗りづらいZに乗っていたから、もしかしたら一年も乗ってないかもしれない。

まぁ、文句をいったところで、自分で買った車なわけではない。最初からおいらに選択権なんてないのだ。それを泪橋の加藤さんにいうと、

「そうだよ!そうだよ!実験君、自分で金払ってないじゃん!なんだ〜聞かなくてもいいじゃん!」

大人はわかってくれない。

習わぬ経は覚えなかった門前の小僧のおいらは、車なんて乗れればいい。別に車種とかなんてどうでもよい。ただ、マニュアルじゃなくちゃイヤなのだ。どうにもこうにも、あのクリープが苦手なのだ。おいらはオマエに乗らされてるんじゃなくって、オマエに乗ってるんだ!おいらがいなきゃ、オマエは進まないんだ!わかってるのか!いざ鎌倉な主従関係なんだぞ!支配してるんだぞ!というのが好きなのだ。特にクネクネ道・・・例えるなら、長野から岐阜あたりに入る辺りの峠とか・・・を乗ってるときは、思わず恍惚としてしまう。

まぁ、いい。

で、次にあてがわれるのは、またもやゴルフォだという。それも泪橋の加藤さんが、どこぞのオークションだか、どっかだかで買ってきた車だ。ドナドナゴルフォは、バージョンが3だか4だか、よくわからないが、一世代前のヤツらしいのだが、ヌエボゴルフォは、より新しいらしい。かなり良い車でおいらにはもったいないくらいの車らしい。でも、当然マニュアルではなくオートマだ。

おいらのマニュアル好きは、結構前から非難囂々であった。ママンはいうまでもなく、パパンも年をとってきたからか、マニュアルの車をイヤがるのだ。直接聞いたわけではないが、拓也もどうもオートマの方がいいらしかった。

だが、拓也はすでに実家にいないし、ママンは仕事用で赤い軽を乗ってるし(最近マーチになった)、パパンはパパンでちょっと前にエルグラントとかいう車を入手してホクホクであった。ということで、完全にマイカーと化しているわけだから、マニュアル反対派もそこまで意地になって反対したりはしない。

Zからドナドナゴルフォになったときも、かなり必死扱いてパパンを説得したのだ。

「昔、男はマニュアル乗れないとダメだっていってたじゃないか〜」

と、武士の二言を責めたり、

「クリープあると事故っちゃうかも〜」

と脅迫したり、

「Zだと2人しか乗れないから、男友達と遊びにいけないんだよ〜」

と男の友情を語ってみたり、

「マニュアル乗ってないと、スペインに行ったときに、困るんだよ〜!」

とグローバルな話をしてみたり・・・。

まぁ、最後は、ファミコンほしがる子供の「だって、みんなもってるんだもん」的な世界だな。

無駄に長くなったな。

結論から言うと、ドナドナゴルフォはやはり売れてしまった。一度、うちに戻ってきたらしいが、おいらが居ないときで、結局お別れをいうことはできなかった。

で、それとほぼ同時にヌエボ ゴルフォ号がやってきた。まだナンバーもなかったし、保険も入ってなかったので、乗れるようになったのは、2週間くらい前のこと。

ヌエボ ゴルフォ号は、見た目はほとんどドナドナゴルフォと変わらなかった。ただ、ちょっと丸みを帯びたような気はするが、車に興味のないおいらにはあまり差がない。色も真っ黒だし。相変わらずの質実剛健っぷりだ。さすがドイツの車だ。

ちょっと前の週末、ヌエボ ゴルフォと友情を深めようとドライブにでることにしたが、そのとき衝撃的な事件が起こった。

助手席の窓を閉めようと、運転席側のスイッチを押したら、途中で「スポッ!!!」と窓が落ちたのだ。本来なら「ウィ〜〜〜〜ン・・・ウィィ〜〜〜ン」と徐々にドアのポケットのところに消えていく窓が、一瞬にして目の前から消えたのだ。本当にスポッと!

あまりのことに言葉を失う。

こんな欠陥車いらねぇ〜〜〜!ドナドナを返せ!!

という感じで、すぐ側にいた泪橋の加藤さんに、攻め寄る。

あの・・・窓が・・・窓が消えたんですけど・・・・

すぐに感づいた泪橋の加藤さんは、あわてて言い訳する。

「実験君!知ってるか?ドイツの車って、部品がちゃんと土に帰るような素材を使ってるんだよ。だから、ある程度時間が経つとボロボロになるんだよね。それにこれは全ゴルフに言える欠陥なんだよ。この前売れたあれなんて、一番落ちるやつなんだぜ!」

「嘘だ・・・おいら、一度も落ちたことないよ。4つとも全部・・・」

「まぁ、この車、長い間乗ってなかったから、もう中の部品がダメだったんだろうな・・・」

「・・・・」

「じゃ〜ちょっと教えておくよ・・・これはダメっていう閉め方・・・」

「なんだよ、それ〜〜〜!そんなの怖すぎだって。旅行いけないやん!旅先で落ちたらどうするんだよ〜!スペインだったら、車の中何も残らないぞ!」

そんな話をしている横で、うちの従業員のキタムラ君が、なにやらドアのポケット(窓が収納されるところのこと)から何か・・・って窓なのだが・・・を一生懸命引っ張りあげようとしている。

「キ、キタムラ君・・・そ、そんな原始的な・・・完全に中にはいっちゃったよ・・・そんな細いところからとれないでしょ・・・」

「ちょっとちょっと実験君、ほら・・・みてな・・・しめるときな・・・」

「う、うん・・・」

「これは正しい閉め方・・・」

スイッチを押したり話したりして、窓を徐々に閉める泪橋

「で、これはだめな閉め方」

スイッチを一回押しただけで、最後まで閉める泪橋(運転主席側の窓はドライバーのことを考えて、普通(?)は一回押しただけで最後まで閉まるようになってるため)

「今きいた!?この、最後に閉まる「ガコン!」って音・・・・これを何度もやると、あ〜やって落ちるのよ〜〜〜!」

「あああああああ!!ドナドナを返せ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」

「とれました!」

キタムラ君・・・軍手した指で、あの隙間3mmくらいしかないポケットから窓を引っ張りだす。そ、そんなんで窓ガラスとれるのかよっ!!

「ああああああああ〜〜〜!!やっぱドナドナがいい〜〜〜!!」

そこへパパンがごっつい吸盤みたいなのを持ってくる。造船所とかにありそうなくらいごつい専門器具だ。ちょっとかっこいい。そいつもドイツ製であった。

吸盤のところには何やらヌルヌルしたクリーム状のものが塗ってある。それを窓にベタッ!とつけたかと思うと、背中側にある二つの取っ手みたいなのを開くと、吸盤がベタ〜〜〜と窓ガラスにくっついた。窓が落ちないためのストッパーであった。たったそれだけのために、こんな厳つい吸盤が・・・・。

「いいじゃん!実験君!かっこいいじゃん!」と泪橋
「ちょっとこれで我慢しとけ」とパパン。
「ああああああ〜〜〜ん!ドナドナ〜〜〜!」とおいら。

ブチブチいってもしょうがないので、諦めてドライブにいく。マリカルメンと吸盤と共に。

で、ヌエボ ゴルフォ号。

前の持ち主は、相当車好きだったのか・・・というか、ヤンキーかなんかだったのか・・・なぜか、ルームミラーの右端にハイビスカスの小さいシール。そして、ハザードボタンの横の、なにもないスペースにもハイビスカスのシール。

どいう人たちか知らないが、車内に綿毛とかおいちゃうような・・・絨毯引いちゃうような方々の車によく貼ってあるシールだ。サーファーとかも貼ってそう。

で、これは元々の仕様らしいが・・・タコメータのところの色が、何ともくらい気分にさせるどす黒い青と赤な電光表示なのだ。

ライトをつける。異常に明るいスペシャルライト。これは取り替えたっぽい。雪山とかまっくらな峠の時には大活躍しそうだが、近所を走るくらいだったら、都内を走る程度だったら全くいらなさそうな明るさだ。

と、これが違和感を感じたところ。

で、よかったところ。

乗り心地はかなり良い。ドナドナゴルフォは、なんでもスポーツカー仕様とかいうやつで、サスペ・・・なんだっけかな・・・まぁ、車のバネだな。バネ。サスペンダー・・・違うな。パーミッション・・・違う。サスペンション?か?まぁ、そのバネがガチガチで、なんとも車らしい、嫌いな人は嫌いらしいが、おいらは好きな男らしい乗り心地であったのに対し、今回のは、ス〜〜〜〜っと進む大人な乗り心地。「寝ちゃった子供も起きないぞっ!」的な感じ。

ガチガチも良いが、大人も良い。うん。

で、お次が、ドリンクホルダーをついにゲット!!!車に最初からついてた。ドナドナゴルフォは、車自体にはついてないし、買ってきて取り付けようにも、取り付ける場所がないのだ。運転席右斜め前のエアコン部の下にはライトのスイッチ(ダイヤルタイプ)があってダメ。正面部のエアコン部はナビのコードがでてて入らない。他にもあれやこれや考えたが、結局良い場所が見つからず、コーヒー買っても、いつも股にはさんで運転していたのだ。あれはかなり不便であった。

しかし、今度のはちゃんと車に収納されるタイプでついていたもんだから、最初に乗った時点でちょっとした感動であった。

で、最後が・・・キーレス。これは、かなり前から欲しかったんだけど、金がかかるとかいう理由で却下されていた。おいらが乗っている車は、なんか古い車種のものが多かったのか、キーレスをつけることは可能でも、最初からついてないものばかりだった。母親の赤軽でさえついていたというのに・・・。友達が、遠くからキーをあけたり閉めたりしているのを、なんどうらやましがったことか!

そのキーレスが・・・ついに・・・という感じなのだ。

いや〜便利便利。なにが便利って、車下りても、荷物やなんやらでもたもたしているマリカルメンを放ったまま、数m車を離れても、カギが閉めれるのだ。わざわざ、ドアの前で待って、「ちゃんと閉めた?」とか聞かなくてもいいのだ。

雨の時とかも重宝する。遠くから開け、ダッシュして車に滑り込むことができる。前だったら、冷たい思いをしながら、(まぁ、たかがしれてるが)カギをカギ穴につっこんで・・・とやらなくてはいけなかった。

ということで、窓スッポ抜け事件のことはすっかり忘れ、キーレスとドリンクホルダーを大いに堪能した。

オートマってところは、未だに不満だが、大きなメリットもあったりする。

ドナドナゴルフォを乗っていた時から、マリカルメンにも運転を覚えさせることにした。免許とって一度も運転してなかったのを、無理矢理させたわけだ。TSUTAYAとかドンキとかまでのコースを何度も練習させた。

マリカルメンの免許はマニュアルだったりするのだが、1年間、まったく運転していないため、さすがに最初からマニュアルを運転させるのはさすがに危険というか、前に進まなさそうなのでやめておいたため、練習はママンのオートマでさせていた。そこから慣れさせて、ドナドナゴルフォの高みまで・・・と思っていたのだが、はからずもマイカーがオートマになった。不幸中の幸いとはまさにこのこと。

これにより、仮にどっかいったとして・・・例えば、日本酒の旨い新潟とかいっても、車の心配をせずに呑んだくれることができるし、お好み焼き食べにいっても、ビールの一杯も呑めるってもんだ。

こう考えるとメリットもでかい・・・・のだが・・・やっぱりクリープが怖い。窓が
落ちるのが怖い。

と、徐々にヌエボ ゴルフォのことを気に入りだしているというのに、泪橋の加藤さん・・・またもや最近変なことを言い始める。それも結構しつこい。

「ねぇ・・・ゴルフとベンツ取っ替えない?」

また、どっかで買ってきたらしい。でもって、泪橋の加藤さん・・・ヌエボ ゴルフォを自分が乗りたいらしい・・・。

だけど・・・絶対に嫌だ。

なんでこの年でベンツなんぞに乗らんといかんのだ。

それだけは断固拒否する。おいらに選択権があろうが、無かろうが。ベンツ乗るくらいなら、自転車乗るわ!


追記
ヌエボ ゴルフォのカギ・・・ボタンを押すと、飛び出しナイフみたいにシャッキ〜〜〜ン!とカギがでてくる。結構面白い。